受難体質の女軍人は漆黒の美形獣人に求愛される
「レーヴさんには、獣人がちょうど良いのではなくて?」

 ウォーレンはまた深く頷いた。

 獣人の恋は、非常に盲目的である。
 百五十年ほどの寿命を持ちながら、その生に執着することなく果敢に人に恋をして、身を捧げる。恋が成就しなければ消滅し、しなくても恋した相手が先立つと寂しくて死ぬ。どちらに転ぼうと、彼らは生涯に渡りたった一人だけをいちずに愛し抜くのだ。

 夫と意見が一致したところで、マリーは改めてデュークとレーヴを見た。
 レーヴが確認するようにおずおずと名前を口にすると、デュークの長い尻尾が嬉しそうに動く。頭の上にピンと立つ黒い耳は、レーヴの言葉を何一つ聞き漏らさないよう、しっかりと彼女の方へ向けられていた。

「デュークさん?」

 レーヴの呼びかけに、デュークが椅子から立ち上がる。
 ゆっくりと彼女の前へ進む足取りは軽やかだ。スラリとしながらも筋肉質な脚は、やはり馬を彷彿とさせる。
 デュークは、レーヴを驚かせないよう細心の注意を払って、彼女の足元へ跪いた。
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