受難体質の女軍人は漆黒の美形獣人に求愛される
「あの……私のこともレーヴと呼んでください」

「レーヴ」

 星やらハートが舞っていそうな雰囲気の中、名前を呼び合って照れ臭そうにしているなんて、一体どこのバカップルだろう。
 デュークはともかく、昨日のレーヴからは想像もできない光景である。
 ウォーレンは身震いした。

「デュークは確かに美形ですけれど……彼は特にレーヴさんの好みでしょうね。おばあさまの獣人研究によれば、獣人は恋した人の好みを寄せ集めたような姿になる、とありました。まぁ、恋が成就しなければ消滅してしまうのですから、合理的と言えますわね」

「愛でられなければ生きられない、愛玩動物のようだな」

「うふふ。獣人はそんな愛らしい生き物ではありませんわ。あなたもご存じでしょう? この世で一番の破壊力を有する戦闘用馬車さえ容易に破壊するような生き物ですわよ?」

 その世にも恐ろしい生き物は、一人の垢抜けない女性に夢中だ。
 強靭な肉体と最強の破壊力を微塵も感じさせないで、彼は「かわいがって」と甘えている。
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