受難体質の女軍人は漆黒の美形獣人に求愛される
 まだ王都に不慣れなデュークを案内するように、レーヴは手をつないだまま歩いた。
 慣れとは恐ろしいもので、最初こそガチガチに緊張していた気持ちも、次第に落ち着いてくる。
 東公園へ到着する頃には羞恥心も溶けきり、いつもそうしてきたかのような錯覚を覚えるほどだった。

 緊張しやすくなかなか心を開かないレーヴが、会うのは二度目のデュークを受け入れているのは珍しい。
 あからさまに好意を向けられて警戒する必要性を感じないせいなのか、それとも相性が良いのか。どちらにしても、レーヴがデュークに対して安心感を持ち始めたのは確かだった。

 東公園は、広い敷地の真ん中に小川が流れ、二つに分けるような配置になっている。小川を境にして東が市場エリア、西が芝生エリアになっていて、外周をぐるりと散歩道が囲んでいた。

 レーヴはデュークと手をつないだまま、煉瓦の散歩道を歩いた。
 時折、ランニングをする人や犬の散歩をしている人とすれ違う。その度にみんなが振り返って二度見するものだから、デュークは困った顔をして帽子を目深に被り、レーヴは美形は美形で大変なんだなぁと苦笑いを浮かべた。
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