受難体質の女軍人は漆黒の美形獣人に求愛される

「……なんだか腹が立ってきた」

　もし、あの忌まわしい記憶の相手がジョージでなくデュークだったなら。
　彼はきっと、着替えを強要したりしない。

「デュークなら、上着を被せた上で優しく抱き上げて家まで送ってくれそう」

　初めて陸に上がった人魚姫を、王子が城へ連れ帰ったように。
　デュークならきっと、レーヴのことを大事に連れ帰ってくれるはず。

　思わず浮かんだ妄想にレーヴは恥ずかしそうに頰を染め、気を取りなおすようにパンを食べ始めた。
　クリームチーズとサーモンのベーグルサンドはあいかわらずおいしい。アクセントのハーブがたまらないとレーヴは頰を緩める。と、その時だった。

「それは、僕があなたを優しく抱きかかえて家に連れ帰っても良い、ということ？」