名前のない星

それからの生活はまさに上の空だった
講義中もバイトも「別れたくない」と思うばかり。神様がいるならどうかご慈悲を…と思うくらい追い込まれていた
なんて弱い私、なんて愚かなわたし

1週間が経ち、彼からやっと連絡が来た

「待たせてごめん」
「やっぱり別れよう、ごめんね」

私の願いは叶わなかった
1つ救いだったのはその日が休講だったこと
家で思いっきり泣いた。誰もいないことが分かっていたから大声で泣いた
そして泣きながら初めてのリストカットをした
痛みは感じない、ただ少しだけ安心した
涙で携帯の画面を濡らしながら「分かった」そう一言だけ返信して本当に私たちの、私の初めての愛は終わってしまった
もっと反抗すれば、直接会いに行ってしまえば、彼の気持ちは変わるかもしれないとグルグル思考を巡らせたが、実行する気力が無かった
拒絶されるのが怖くて何も言えなかった
それから暫くの間私は大学に行けなくなった
顔を見てしまえば縋ってしまいそうで自分を抑えられなくなりそうで見るのも嫌だった
あんなに大好きだったのに、この瞬間は憎悪に溢れていた

半月ぶりに登校すると構内の雰囲気は学園祭一色だった
そういえばそんな時期か。と思いつつ、私の学科の出し物はレストランだったので友人とメニューを考え、試作を繰り返した
料理を作っている時は幸せだった、とても楽しくて充実していたし、半月も講義を休んだのに何も追求してこない友人に感謝した
なんとなく察していたのかもしれない

学園祭当日、友人と一緒に回っていたが途中で友人が彼氏と合流し私は彼の学科付近で1人になってしまった
自分の学科に帰ろうとした時、

「明美!」

声を掛けられ振り返ると彼がいた
どの面下げて呼んでるんだ今更なんの用があるのかと嫌悪感すら感じた

「なに?」

我ながらぶっきらぼうな返事だと思ったが泣かない為にはこれが精一杯だった

「元気?」
「どうだろうね?」

元気に見えんのか?心の中の自分が彼を否定した。好きだったのになぁ、なんて半べそかきながら

「ちょっと話そ?」
「え〜嫌なんだけど」
「なんで?」
「傷心中だから?」
「ごめんて!」

痛む心を必死に我慢して自傷ネタで笑ってみると緊張していた私も、強ばっていた彼の顔を少し綻んだ気がした


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