三度目のファーストキス
 私たちがカップルになったことは学校中にすぐ知れ渡った。学校一のベストカップルだとか言われるようになった。そのお陰が蓮也も私も告白されることがなくなった。私は蓮也の名実共に一番の女の子になれてすごく幸せだった。今はまだ恋人として好きじゃないかもしれないけど、いつか絶対私のこと好きになってくれると確信していたんだ。

 その確信に不安が混ざって来るのに時間はかからなかった。蓮也の態度が付き合う前から一行に変わらないのだ。友達のまま。手を繋ぐのはいつも私から。遊ぼうというのも私から。一緒にいる時間は確実に増えたのに関係性は依然と同じまま。

『蓮也、大好き』

 そう言っても返ってくるのは「うん」の一言。優しく抱き締めてくれたり、頭を撫でてくれたりするけど、私ばかり好きという感覚はずっと消えなかった。

 付き合って半年くらい経ったころにももちゃんの存在に気付いた。蓮也には一緒にいてもふと無言になる瞬間があった。その度に視線の先にはももちゃんがいた。初めは誰だとと思うだけで特に気に留めていなかった。でも、ある時

『…もも…』

 小さくつぶやく声が聞こえた。私以外の女の子を呼び捨てで呼んでいた。ぎゅっと胸が痛くなり蓮也に思わず聞いた。

『誰?』
『え?』

 自分がつぶやいていたことにも気づいていなかったようだ。蓮也は驚いて私を見つめた。

『あの子。よく見てるけど』
『え?あぁ。何でもないよ。同小の子。あははっ。』

 ひきつった表情で言う蓮也。こんな辛そうな蓮也は初めて見た。これ以上詳しく聞けなかった。

 山本桃花。蓮也の視線の先にいる子を私もよく見るようになった。頭はそこそこいいみたい。でも他はすべていたって普通。私の相手にもならないような子なのに気になって仕方なかった。
< 30 / 86 >

この作品をシェア

pagetop