三度目のファーストキス
 付き合って1年経っても蓮也は変わらなかった。大事にしてはくれるけど、他の女の子よりは上だけど他の男友達と何も変わらない。ベタベタもしてこない。キスもしたことなかった。蓮也には中学生男子特融のガツガツしたところが全くなかった。女の子に興味のある年頃のはずなのに。いつでも手をだしていい私がいるのに。

 私は焦っていた。蓮也が他の女の子にとられないならこのままでいい。そのうち私を好きになってくれると思っていた自信がなくなっていた。付き合ってても蓮也はこのまま変わらないんじゃないかと感じ始めた。私だけでなく女の子自体にあまり興味がないように思える。ただ、切なそうに山本桃花を見つめる事だけはずっと同じだった。

 そんなある日、蓮也と中庭を歩いている時にふと視線を感じ、そちらを向いた。遠くの廊下から山本桃花がこちらを見ていた。私と目が合うと明らかに視線を逸らしどこかへ行ってしまった。その瞬間、言いようのない真っ黒な不安が胸に広がった。

 何でこっち見てたの?たまたま?この二人は何?

 ただ遠くから目が合っただけなのに、すごく胸騒ぎがした。二人には見えない繋がりがあるようですごく気分が悪かった。

『ん?柚葉どうした?』
『え?何でもないよ。』
『そうか?腹でも痛いんじゃねぇの?』
『何それ。ホント蓮也はデリカシーないよね。あはは。何でもないよ。』

 繋がれた蓮也の手を強く握った。
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