三度目のファーストキス
そっと後ろから近づき優しく抱き締めた。
「ぎゃっ?」
柔らかくていいにおいがする。首筋に顔を埋めた。癒される。
「ぎゃって何?もっと色っぽい声出ないの?」
「と、智くんやめて!」
「邪魔しないから続けて?」
「邪魔だよ!離れて!しょうじいちゃん...」
ももちゃんがじいちゃんに涙声で助けを求める。
「コレ、智。離れんか。」
「へ~い」
真っ赤になったももちゃんの顔を覗き込む。
「ふふっ。真っ赤。かわいいっ。」
「……」
ももちゃんは相変わらず俺を睨んでくるけど。全く怖くない。かわいすぎる。
「もう!いじわるばっかりしないでよ!ねぇ、しょうじいちゃん!」
「じいちゃんに助け求めても意味ないからね。俺の遺伝子はじいちゃん譲りだから」
「変な事言うな。わしはばあちゃん一筋じゃからの」
「ふ~ん?」
「お前は向こう行っておけ。」
「俺も手伝おうかな~。暇だし。ももちゃんもいて楽しそう」
「ふん。それじゃあ、邪魔せんとしっかりやってくれよ。」
じいちゃんは憎まれ口をたたきながらも少し嬉しそう。気づいてないかもしれないけどじいちゃんは俺が手伝うとふと目が細くなって嬉しそうな顔をする。
「最近はお酒飲んでないよね。気を付けないとダメだよ。」
「うっ...その節は失礼しました。」
ももちゃんが申し訳なさそうに小首をかしげて上目遣いで謝ってきた。
「レンくんにも迷惑かけちゃった。重いのに家まで運んでくれて...」
「……」
ももちゃんが微かにほほを染めたような気がした。
俺に挑戦するように二人分のお金を置いて、ももちゃんを抱えて出て行ったアイツの顔が浮かび、何だかイラっとした。まあ、挑発したのは俺なんだけどね。
「酒ってこわ。途中から全然記憶ないよ…もう絶対飲まない。」
「そんなこと言わないで。お酒も楽しいよ。もう限界分かったから、2杯くらいでやめとけばいいんだよ」
小豆を火にかけ、次にどら焼きの皮づくりにとりかかる。俺がじいいちゃん直伝の材料をきちんと量り、ももちゃんが生地を混ぜる。
「カルアミルクだっけ?あれ、甘くておいしかった。」
「でしょ?また飲もうよ。」
「う~ん...」
「お?生地できたか?…ん?なんじゃ、酒の話をしとるのか。」
じいちゃんが近づいてきてボールの中を覗き込みながら言った。生地を焼くのはじいちゃんが直接する。熱したフライパンにじいちゃんが生地を流し入れた。俺たちはじいちゃんの両脇に立って生地をじっと見つめた。ぷつぷつと生地が音を立て、甘い匂いがしてくる。ちらりとももちゃんを見ると、目をつむって匂いを堪能していた。
「お前たち一緒に酒飲みに行ったそうじゃの。」
「そうなんですよ。私、大失敗しちゃって。もう、お酒はこりごりです...」
「わしもももちゃんと酒飲みたいのぅ。」
「私も飲みたいですけど、また失敗したらみなさんに迷惑かけちゃう。」
「ここで飲めばいいんじゃないかな。のう?智?」
じいちゃんが俺の方を見ながら意味深な視線を送ってくる。
「そうじゃん!ここで3人で飲もうよ。料理もすぐ作れるし、酔ったらじいちゃん家で寝ればいいしね。俺たちがついてるから大丈夫!」
「そうじゃそうじゃそうしよう。」
じいちゃんがわくわくしている。そんなにももちゃんと飲みたいのか。そんなじいちゃんに笑えて来る。
「え!すごく楽しそう!いいんですか。しょうじいちゃんのごはんもおいしいし。」
「楽しそうじゃのぅ。そうしよう。決まりだ。そのまま泊って行ってもいいしな。みんなで川の字で楽しそうじゃの。」
二人で盛り上がるのを冷静に見ながらすっきりしない気分になった。
「最後の一枚じゃの。ももちゃん焼いてみるかい?」
「いいんですか?焼いてみたいです!」
ももちゃんが生地をフライパンに入れるのを見届けてじいちゃんは家の方に入って行った。
「ねぇ?いいの?」
「え?何が?」
「じいちゃんがここでみんなで飲もうって言ってるけど。無理に合わせなくてもいいからね。」
男二人暮らしの家で女の子一人で一緒に飲むなんてはたから見たらよろしくないだろう。じいちゃんはともかくこの俺だぞ。自分で言うのも何だけど、女たらしの手が早い俺だぞ。そういう俺をももちゃんはよく知ってるだろうに。ももちゃんは男に耐性ないし固いからこういうの無理って言いそうだけどな。
「ん?」
心底よくわからないというように俺を見てきた。
「え~?ももちゃんかわいいからお酒に酔ったふりして俺、食べちゃうかもしれないよ~?」
「あはは。も~またまた。智くんが私を?ないない!」
「……」
「もぅ。そんなこと言っちゃって。他の女の子がいっぱいいるのに。私なんかに手を出さないって。わかってるよ。信じてるから大丈夫。智くんが女関係ゆるくても一緒に働く友達の私まで手を出すほど見境ないわけじないのわかってるから。」
ももちゃんがいつも通りの柔らかい笑顔。
ああ。これ本心のやつだ。
あえて軽く聞いてみたのに、軽く返されちゃったな。信用されてて嬉しいはずなのに。何だろ。何かモヤモヤする。俺、信用されすぎじゃない?これだけ男として意識されてないと逆に寂しいんですが。
「ぎゃっ?」
柔らかくていいにおいがする。首筋に顔を埋めた。癒される。
「ぎゃって何?もっと色っぽい声出ないの?」
「と、智くんやめて!」
「邪魔しないから続けて?」
「邪魔だよ!離れて!しょうじいちゃん...」
ももちゃんがじいちゃんに涙声で助けを求める。
「コレ、智。離れんか。」
「へ~い」
真っ赤になったももちゃんの顔を覗き込む。
「ふふっ。真っ赤。かわいいっ。」
「……」
ももちゃんは相変わらず俺を睨んでくるけど。全く怖くない。かわいすぎる。
「もう!いじわるばっかりしないでよ!ねぇ、しょうじいちゃん!」
「じいちゃんに助け求めても意味ないからね。俺の遺伝子はじいちゃん譲りだから」
「変な事言うな。わしはばあちゃん一筋じゃからの」
「ふ~ん?」
「お前は向こう行っておけ。」
「俺も手伝おうかな~。暇だし。ももちゃんもいて楽しそう」
「ふん。それじゃあ、邪魔せんとしっかりやってくれよ。」
じいちゃんは憎まれ口をたたきながらも少し嬉しそう。気づいてないかもしれないけどじいちゃんは俺が手伝うとふと目が細くなって嬉しそうな顔をする。
「最近はお酒飲んでないよね。気を付けないとダメだよ。」
「うっ...その節は失礼しました。」
ももちゃんが申し訳なさそうに小首をかしげて上目遣いで謝ってきた。
「レンくんにも迷惑かけちゃった。重いのに家まで運んでくれて...」
「……」
ももちゃんが微かにほほを染めたような気がした。
俺に挑戦するように二人分のお金を置いて、ももちゃんを抱えて出て行ったアイツの顔が浮かび、何だかイラっとした。まあ、挑発したのは俺なんだけどね。
「酒ってこわ。途中から全然記憶ないよ…もう絶対飲まない。」
「そんなこと言わないで。お酒も楽しいよ。もう限界分かったから、2杯くらいでやめとけばいいんだよ」
小豆を火にかけ、次にどら焼きの皮づくりにとりかかる。俺がじいいちゃん直伝の材料をきちんと量り、ももちゃんが生地を混ぜる。
「カルアミルクだっけ?あれ、甘くておいしかった。」
「でしょ?また飲もうよ。」
「う~ん...」
「お?生地できたか?…ん?なんじゃ、酒の話をしとるのか。」
じいちゃんが近づいてきてボールの中を覗き込みながら言った。生地を焼くのはじいちゃんが直接する。熱したフライパンにじいちゃんが生地を流し入れた。俺たちはじいちゃんの両脇に立って生地をじっと見つめた。ぷつぷつと生地が音を立て、甘い匂いがしてくる。ちらりとももちゃんを見ると、目をつむって匂いを堪能していた。
「お前たち一緒に酒飲みに行ったそうじゃの。」
「そうなんですよ。私、大失敗しちゃって。もう、お酒はこりごりです...」
「わしもももちゃんと酒飲みたいのぅ。」
「私も飲みたいですけど、また失敗したらみなさんに迷惑かけちゃう。」
「ここで飲めばいいんじゃないかな。のう?智?」
じいちゃんが俺の方を見ながら意味深な視線を送ってくる。
「そうじゃん!ここで3人で飲もうよ。料理もすぐ作れるし、酔ったらじいちゃん家で寝ればいいしね。俺たちがついてるから大丈夫!」
「そうじゃそうじゃそうしよう。」
じいちゃんがわくわくしている。そんなにももちゃんと飲みたいのか。そんなじいちゃんに笑えて来る。
「え!すごく楽しそう!いいんですか。しょうじいちゃんのごはんもおいしいし。」
「楽しそうじゃのぅ。そうしよう。決まりだ。そのまま泊って行ってもいいしな。みんなで川の字で楽しそうじゃの。」
二人で盛り上がるのを冷静に見ながらすっきりしない気分になった。
「最後の一枚じゃの。ももちゃん焼いてみるかい?」
「いいんですか?焼いてみたいです!」
ももちゃんが生地をフライパンに入れるのを見届けてじいちゃんは家の方に入って行った。
「ねぇ?いいの?」
「え?何が?」
「じいちゃんがここでみんなで飲もうって言ってるけど。無理に合わせなくてもいいからね。」
男二人暮らしの家で女の子一人で一緒に飲むなんてはたから見たらよろしくないだろう。じいちゃんはともかくこの俺だぞ。自分で言うのも何だけど、女たらしの手が早い俺だぞ。そういう俺をももちゃんはよく知ってるだろうに。ももちゃんは男に耐性ないし固いからこういうの無理って言いそうだけどな。
「ん?」
心底よくわからないというように俺を見てきた。
「え~?ももちゃんかわいいからお酒に酔ったふりして俺、食べちゃうかもしれないよ~?」
「あはは。も~またまた。智くんが私を?ないない!」
「……」
「もぅ。そんなこと言っちゃって。他の女の子がいっぱいいるのに。私なんかに手を出さないって。わかってるよ。信じてるから大丈夫。智くんが女関係ゆるくても一緒に働く友達の私まで手を出すほど見境ないわけじないのわかってるから。」
ももちゃんがいつも通りの柔らかい笑顔。
ああ。これ本心のやつだ。
あえて軽く聞いてみたのに、軽く返されちゃったな。信用されてて嬉しいはずなのに。何だろ。何かモヤモヤする。俺、信用されすぎじゃない?これだけ男として意識されてないと逆に寂しいんですが。