三度目のファーストキス

　ドンドンドン！

　ドンドンドン！

「おい！中いるんだろ？開けろよ。」

　急に店のドアを叩く音が聞こえた。聞き覚えのある声にある顔が浮かび嫌な予感がする。

　ドンドンドン！

「な…なに？」

　ずっと続く扉を叩く音にももちゃんがきゅっと俺の袖を握った。怯えたように扉を見つめる。

「…はあ。俺行ってくる。」

　ため息をついて扉の方へ向かおうとすると、ももちゃんが俺の腕を掴んだ。

「待って。誰？大丈夫？」
「あはは。大丈夫。知り合いだから。」

　ももちゃんに笑顔を向けて扉に手をかけた。

「おい、おせーよ。早く出ろよ。こっちは暇じゃねぇんだから」

　外に出ると予想通りの人物が。いつものように不機嫌で偉そうに俺を見てくる。

「…なに？」

　自然と俺も不機嫌になる。

「あの女から連絡が来たんだよ。お前に会いたいって。いい加減連絡先教えておけよな。ちっ。めんどくせぇ。」
「……」

　苛立ちを隠さず舌打ちをされた。

　あの女という言葉に次第に周りの声が聞こえなくなっていく。胸に重い鉛が入ったようにズンと息苦しい。脳裏に妖艶に微笑む女の顔が。俺は未だに「あの女」にとらわれたままだ。

　はっ。乾いた笑い声が出た。そんな自分に嫌気が察す。