三度目のファーストキス
「ももちゃん、こっちこっち!」

 店の前で手を振る柚葉ちゃんを前に自然と繋がれた手が離れた。

 あっ。離れちゃった。

 うっ。何てこと思ってるの...柚葉ちゃんにものすごく申し訳なくなった。なに人の彼氏と手を繋いでるんだ。

「ごめん」
「何?どうしたの?」

 思わず謝ってしまった。

「これどう?」
「こっちがいいよ。」

 柚葉ちゃんと諒太くんが交互に服を私に当てる。

「いや、こっちかな」
「うぅ~こっちもかわいい!」
「……」

 着せ替え人形状態。気軽に声を挟める状況じゃありません。

「これなんかいいんじゃない?」

 レンくんが手にしたのは薄緑色のワンピース。黄色と青色の花模様。

「………」
「………」
「え?ダメ?」

 黙り込む二人に小さくなるレンくん。

「……蓮也のくせに…」
「……蓮也のくせに…」
「かわいい!」

 二人のつぶやきを背に私が叫んだ。爽やかな薄緑色に小さな花模様。ふわっとしたシルエット。かわいい。この先の夏に涼しげに見えそう。

「悔しい。やっぱり蓮也はもものことよくわかってるな。」
「…くやしぃ」
「蓮也なんかに先越されるとは。」
「ホント、蓮也なんかに…」
「おい!」
「あはは!」

 面白い!楽しい!

 結果、レンくんチョイスのワンピースを買うことになったのでした。
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