三度目のファーストキス
 は~落ち着く…
 
 深く息を吸うとお茶の匂いと和菓子の甘い匂いが体に染み渡る気がする。自然と笑顔になる。

 私にとって一番のオアシスはとも庵だなぁ。家ではいろいろ考えちゃうし、学校ではレンくんに会わないかと気が気じゃない。

「あれ?智くん今日もいないなぁ。」

 ひとり呟いた。そういえばここ1週間くらい智くんは店に来ていない気がする。『ももちゃ~ん』とへらへらしてる智くんに会わないと静かだけどそれはそれで寂しいな。1週間も店に来ないのは珍しい。

「智のやつ部屋にとじこもってるんじゃよ…」
「え?」

 珍しく神妙な顔をしているしょうじいちゃんの方を見る。

「とじこもるって…」

 いつもへらへら笑顔の悩みなんてなさそうなの智くんがとじこもってるなんて。女の子に会いにも行かずに。ふふっ。私も智くんに対してひどいなぁ。そう思って思わず笑ってしまった。

「……」

 しょうじいちゃんは神妙な顔のままだまっている。重い空気が流れる。少し心配になってきた。

「あの…?ホント何かあったんですか。」
「…ももちゃんにお願いがあるんじゃ。」
「は…い...?」

 いつもと違うしょうじいちゃんの様子に自然と声が小さくなった。

「あいつのそばにおってくれんかの。」
「え?」
「実はな…」
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