三度目のファーストキス
「智くん、最近何かあったの?全然お店に来ないんだもん。ふふっ。いつもうるさい智くんがいなくて寂しいから部屋まで突撃しちゃいましたよ~。」
いつもどおりのおっとりした様子でももちゃんが話す。
「おやつ持ってきたよ~一緒に食べよう。」
「え~?俺腹減ってないんだけどなぁ。」
食欲がなくもう数日ちゃんとしたものを食べていなかった。それなのに。
ぐぅ~
「…ぷっ…あははは!智くんのお腹はそうじゃないみたいだよ。」
「うっ。おかしいな。はははっ。」
久しぶりに笑った。ももちゃんのあったかい笑顔とおやつ達を見たら急にお腹がすいてきた。
「智くん、どっち食べる?やっぱり抹茶ケーキ?」
「う~ん。そうしようかな。」
ももちゃんが俺の方に抹茶ケーキを取り分けて渡してくれた。
「智くん、見て見て!これね、私が作ったの。」
「ん?」
ももちゃんが指さすのは、ぷるぷるの透明な水まんじゅう。
「初めて作たんだよ。しょうじいちゃんが教えてくれたの。見てよ。このきらめき!」
「……」
うっとりと水まんじゅうを見つめている。愛しそうな目線の先には水まんじゅう。なんなのももちゃん。俺の様子を見に来たんじゃないのかよ。
「…あはははっ!ももちゃん、最高!シュールすぎるっ。ぷっ…ヤバ。水まんじゅうをそんなに愛しそうに見る若い子なんてももちゃんしかいないね。あはは。和菓子愛がヤバすぎるっ」
「…うっ。何よぉ。ヒド。バカにしてる」
ももちゃんが少し顔を赤くして睨む。あぁ。久々にこんなに笑ったよ。
「ちがうよ。バカにしてない。ももちゃんらしくていいなあって思ったんだよ。」
「……」
まだ睨むももちゃんがかわいい。そっと頭を撫でた。
「ホントだよ。そんなももちゃんが好きだなぁ。」
「…っ!な、なに!」
「俺、ももちゃんの水まんじゅう食べてもいい?」
「え?智くんが?餡子入ってるよ?」
「そうだけど、何か食べてみたい。」
水まんじゅうを一口すくって口に運んだ。
「甘っ」
まず餡子の甘みがガツンと来たけど、その後みずみずしいさっぱりとした後味が残る。
「そりゃあ、餡子はあまいよ。」
ももちゃんが拗ねたように言った。
「でも、美味しい…」
「え?本当?」
お世辞ではなかった。和菓子なんていつぶりだろうか。甘いけどさっぱりしていてのどごしがいい。
「うん。すごいね。ももちゃん。餡子嫌いのこの俺が食べられるなんて。」
もう一口。うん。やっぱりうまい。
「うわ~~!本当?嬉しぃ!智くんがそう言ってくれるなんて。」
「じいちゃんよりうまいよ。」
「そんなことないよっ!」
否定しながらも目が潤んでいる。えへへって言いながら水まんじゅうをつんつん触ってる。
ああ。もう。かわいいなぁ。胸がきゅんと痛んだ。
「あ~あ!久しぶりに起きて食べたらつかれちゃった~!」
俺はごろんとももちゃんの膝に頭を載せて横になった。何だか猛烈にももちゃんに近づきたくなった。
「ちょ…ちょっと!」
ももちゃんは真っ赤になって頭をどかそうとしたけど、俺がぎゅっと腰を抱き締めたせいでまったく動けなくなった。ももちゃんのテレた顔はたまんない。嫌がられるのはわかってるけどいじめてしまうんだ。
「いい~じゃん。今日くらい。俺体調悪いんだもん。」
「え~?いつもじゃん。智くんがベタベタしてくるの。」
「ねぇ、次抹茶ケーキ食べたい。あ~ん」
目をつむって口を開けた。
「えっ?食べさせるの?智くんさっき疲れたって言わなかった?」
「ももちゃんの膝が心地よくて食べたくなった。」
「じゃあ、起きて自分で食べなよ」
「いいじゃん、いいじゃん、あ~ん」
ももちゃんがしぶしぶ俺の口に入れてくれた。
「おっ!うめぇ~!ももちゃんがくれるとうまいなぁ。」
「もう、調子いいんだから。ふふっ。」
「…ってっ」
ももちゃんが俺のおでこをぺしっと叩いた。もう無理やり俺から離れようとはしなかった。いつものももちゃんならもっと無理やり離れようとするはずなのに。
上を見ると至近距離に優しく微笑むももちゃんの顔。何だか胸がぎゅっとして息苦しくなった。また膝の上で腰にぎゅっと巻き付く俺を見てももちゃんが心配そうに言った。
「智くん?」
「ちょっと目が痛い。見てくれる?」
「うん?」
近づいてきたももちゃんの顔を手でぐっと近づけて柔らかい頬に口づけた。
「えっ!」
ごんっ。
「痛って…」
思い切りももちゃんが立つから頭を打ってしまった。
「何するの?」
「何って。チュウ?」
「え?何で?目が痛いって?」
「う~ん。したかったから?ももちゃんがかわいいから?」
「……」
「お~い?」
ももちゃんは黙り込んで顔を真っ赤にしている。
「はぁ~?キスなんてそんなに簡単にしちゃダメなんだよっ!好きな人にしかだめっ!」
「俺、ももちゃん好きだよ?」
「はぁ~?もう知らない!智くん、嫌い!」
ぷりぷり怒って部屋を出て行ってしまった。
「くっ。あははは。」
ああ。もうかわいすぎる。
すごくすっきりした気分だ。ずっとまとわりついていたあの女の残像がきれいさっぱりなくなっていた。モモちゃんパワーはすごい。
きっと、じいちゃんから話を聞いたんだろうな。
ももちゃんが俺の部屋に来るなんて初めてのこと。しかもベタベタしてきた俺をいつもより拒まなかった。最後はやりすぎて怒らせちゃったけど。
何も聞かないでいてくれたのがありがたかった。こんなかっこわるい話、ももちゃんには話せない。
「よしっ」
顔を思い切り両手で叩いて気合を入れた。
いつもどおりのおっとりした様子でももちゃんが話す。
「おやつ持ってきたよ~一緒に食べよう。」
「え~?俺腹減ってないんだけどなぁ。」
食欲がなくもう数日ちゃんとしたものを食べていなかった。それなのに。
ぐぅ~
「…ぷっ…あははは!智くんのお腹はそうじゃないみたいだよ。」
「うっ。おかしいな。はははっ。」
久しぶりに笑った。ももちゃんのあったかい笑顔とおやつ達を見たら急にお腹がすいてきた。
「智くん、どっち食べる?やっぱり抹茶ケーキ?」
「う~ん。そうしようかな。」
ももちゃんが俺の方に抹茶ケーキを取り分けて渡してくれた。
「智くん、見て見て!これね、私が作ったの。」
「ん?」
ももちゃんが指さすのは、ぷるぷるの透明な水まんじゅう。
「初めて作たんだよ。しょうじいちゃんが教えてくれたの。見てよ。このきらめき!」
「……」
うっとりと水まんじゅうを見つめている。愛しそうな目線の先には水まんじゅう。なんなのももちゃん。俺の様子を見に来たんじゃないのかよ。
「…あはははっ!ももちゃん、最高!シュールすぎるっ。ぷっ…ヤバ。水まんじゅうをそんなに愛しそうに見る若い子なんてももちゃんしかいないね。あはは。和菓子愛がヤバすぎるっ」
「…うっ。何よぉ。ヒド。バカにしてる」
ももちゃんが少し顔を赤くして睨む。あぁ。久々にこんなに笑ったよ。
「ちがうよ。バカにしてない。ももちゃんらしくていいなあって思ったんだよ。」
「……」
まだ睨むももちゃんがかわいい。そっと頭を撫でた。
「ホントだよ。そんなももちゃんが好きだなぁ。」
「…っ!な、なに!」
「俺、ももちゃんの水まんじゅう食べてもいい?」
「え?智くんが?餡子入ってるよ?」
「そうだけど、何か食べてみたい。」
水まんじゅうを一口すくって口に運んだ。
「甘っ」
まず餡子の甘みがガツンと来たけど、その後みずみずしいさっぱりとした後味が残る。
「そりゃあ、餡子はあまいよ。」
ももちゃんが拗ねたように言った。
「でも、美味しい…」
「え?本当?」
お世辞ではなかった。和菓子なんていつぶりだろうか。甘いけどさっぱりしていてのどごしがいい。
「うん。すごいね。ももちゃん。餡子嫌いのこの俺が食べられるなんて。」
もう一口。うん。やっぱりうまい。
「うわ~~!本当?嬉しぃ!智くんがそう言ってくれるなんて。」
「じいちゃんよりうまいよ。」
「そんなことないよっ!」
否定しながらも目が潤んでいる。えへへって言いながら水まんじゅうをつんつん触ってる。
ああ。もう。かわいいなぁ。胸がきゅんと痛んだ。
「あ~あ!久しぶりに起きて食べたらつかれちゃった~!」
俺はごろんとももちゃんの膝に頭を載せて横になった。何だか猛烈にももちゃんに近づきたくなった。
「ちょ…ちょっと!」
ももちゃんは真っ赤になって頭をどかそうとしたけど、俺がぎゅっと腰を抱き締めたせいでまったく動けなくなった。ももちゃんのテレた顔はたまんない。嫌がられるのはわかってるけどいじめてしまうんだ。
「いい~じゃん。今日くらい。俺体調悪いんだもん。」
「え~?いつもじゃん。智くんがベタベタしてくるの。」
「ねぇ、次抹茶ケーキ食べたい。あ~ん」
目をつむって口を開けた。
「えっ?食べさせるの?智くんさっき疲れたって言わなかった?」
「ももちゃんの膝が心地よくて食べたくなった。」
「じゃあ、起きて自分で食べなよ」
「いいじゃん、いいじゃん、あ~ん」
ももちゃんがしぶしぶ俺の口に入れてくれた。
「おっ!うめぇ~!ももちゃんがくれるとうまいなぁ。」
「もう、調子いいんだから。ふふっ。」
「…ってっ」
ももちゃんが俺のおでこをぺしっと叩いた。もう無理やり俺から離れようとはしなかった。いつものももちゃんならもっと無理やり離れようとするはずなのに。
上を見ると至近距離に優しく微笑むももちゃんの顔。何だか胸がぎゅっとして息苦しくなった。また膝の上で腰にぎゅっと巻き付く俺を見てももちゃんが心配そうに言った。
「智くん?」
「ちょっと目が痛い。見てくれる?」
「うん?」
近づいてきたももちゃんの顔を手でぐっと近づけて柔らかい頬に口づけた。
「えっ!」
ごんっ。
「痛って…」
思い切りももちゃんが立つから頭を打ってしまった。
「何するの?」
「何って。チュウ?」
「え?何で?目が痛いって?」
「う~ん。したかったから?ももちゃんがかわいいから?」
「……」
「お~い?」
ももちゃんは黙り込んで顔を真っ赤にしている。
「はぁ~?キスなんてそんなに簡単にしちゃダメなんだよっ!好きな人にしかだめっ!」
「俺、ももちゃん好きだよ?」
「はぁ~?もう知らない!智くん、嫌い!」
ぷりぷり怒って部屋を出て行ってしまった。
「くっ。あははは。」
ああ。もうかわいすぎる。
すごくすっきりした気分だ。ずっとまとわりついていたあの女の残像がきれいさっぱりなくなっていた。モモちゃんパワーはすごい。
きっと、じいちゃんから話を聞いたんだろうな。
ももちゃんが俺の部屋に来るなんて初めてのこと。しかもベタベタしてきた俺をいつもより拒まなかった。最後はやりすぎて怒らせちゃったけど。
何も聞かないでいてくれたのがありがたかった。こんなかっこわるい話、ももちゃんには話せない。
「よしっ」
顔を思い切り両手で叩いて気合を入れた。