三度目のファーストキス
「ホントお前はモテるくせに残念だよな。」

 まあ、そこがいいところなのかもしれないけど。と小さい声でぶつぶつ言っている。

「は?モテるって何だよ。俺、全然モテないけど。」
「……」

 諒太が軽蔑するような目で俺を見てきた。

「え?バカなの?」
「え?マジだって。付き合ったのは柚葉だけだって。告白だってされないし。全然モテないって。モテるのは諒太の方だろ。」
「……」

 諒太が信じられないという表情で俺をじっと見てくる。

「…な…なんだよ。何か言えよ。」
「柚葉のおかげか…」
「え?」

 ぼそっとつぶやく声があまり聞えなかった。

「気づいてなかったと思うけど、ずっと柚葉が蓮也に寄ってくる女たちを牽制してたんだよ。」
「え?どういうことだ?」
「だいたいお前と知り合いになるとお前を好きになる。もっと近づこうとか思っても最強彼女がいつも隣にいるからどうしようもなくすぐ諦めることになる。」
「俺の彼女って柚葉のことか?」
「ほとんどの人たちはお前らが付き合ってると思ってただろうな。」
「はぁ…」

 初めて知る事実に感心して諒太を見つめた。諒太が苦笑いした。

「お前ら一緒にいたらイチャイチャしてるようにしか見えないしな。」
「は?イチャイチャなんかしてねぇって。普通普通。」
「柚葉がうまいことやってたんだよな。でも、好きでもない女にあの距離感はないわ。お前も悪い。」
「え?俺距離近い?」
「はあ~。ホント、鈍感だよな。無自覚って怖いわ。この前、ももの前で泣きじゃくる柚葉抱き締めてただろ?」
「ん?」

 そうだっけ。柚葉が泣いてたのは覚えてるけど、俺が抱き締めたがどうかは覚えてない。

「覚えてないか。そうだろうな、お前は。わかるよ、その行為に意味がないから覚えてない。」

 何が言いたいのか諒太をじっと見る。

「好きな女の前で他の女を抱き締めるなんてありえねーよ。お前逆で考えてみろ。お前の目の前であのバイト先の先輩…名前忘れたけど。」
「智さん?」
「そう、そいつにももが抱き締められたら蓮也、お前はどう思うんだよ。」
「…っ!」

 息を飲んだ。ももが智さんに抱き締めれる…。絶対嫌だ!想像するだけで胸がねじれそうだ。

 この前の智さんが来た飲み会が思い出された。いちいちももに触る智さんに思いっきり嫉妬した。

「ちょっとは距離感考えろよ。ももに誤解されたくないならな。」
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