三度目のファーストキス
「智くん、ありがとう。」
「……」

 もっと一緒にいたかったのに、すぐ着いてしまった。なごり惜しくて思わず無言で見つめる。

「智くん?」
「…俺はももちゃんの味方だからね。あんまり悩まないで。」

 俺の言葉にももちゃんは一度目を開いてから、目を潤ませた。その顔がかわいくてきれいで…思わずももちゃんの顔に触れた。潤んだ瞳に引き寄せられるように顔を近づけた。

「…ダメ。」

 唇が触れそうな瞬間、手で顔を押された。

「そういうの大丈夫。ありがとうね。いつもそうやって私を元気にしてくれるね。」
「…あ…ああ、あと少しだったのに残念!あはは」
「智くん、本当にありがとう。おやすみ。」

 小さく手を振って玄関へとももちゃんは入って行った。

 ああ。今のは完全に無意識だった。全く、俺らしくない。はあ。片手で顔を覆う。ありえないほど心臓がバクバク言っていた。
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