訳アリ令嬢ですが、憧れの公爵様に溺愛されています!
 火傷による発熱も下がり、体力が随分回復した頃。私は、ウィルに会いたいとお父様に懇願しましたが、即却下。
 お父様のお怒りは冷めることなく、ウィルや公爵家の話が出るだけで眉間に皺を寄せるようになりました。

 幼い私は、それでもウィルに会いたくてたまりません。そうして我慢が出来なくなった頃、公爵領までこっそり一人で行くことを決意。方法は、屋敷を抜け出し、荷馬車に紛れ込み、公爵邸の前で直談判という無茶苦茶な計画でした。
 当時私は、良い医者を求めて王都の伯爵邸で療養していたので、公爵領はお隣。公爵領の中心部まで行く荷馬車が近くを通ることは知っていました。

『ローズ、本当に行くの?』

 私と仲良しの花妖精が言いました。私は「デイジー」と名付けて呼んでいます。
 妖精には普通名前はありません。でも、デイジーは、庭園に咲くデイジーのお花に似た可愛い妖精なので、勝手にそう名付けたのです。

「もちろんです!私、元気になったのよってウィルに教えてあげたいもの!」
『それで、その恰好は何?』

 私はできるだけ地味なワンピースに、メイドのエプロンを半分に折って腰に巻き、白のハンカチを頭に被っています。

「お花売りの少女に変装してるのよ!デイジーも手伝って!」
『あ!荷馬車が来たよ!裏通りに停めてあるよ!』

 妖精の手助けもあり、私はこっそり荷馬車に乗り込みました。半日程で公爵領の中心街に到着。荷馬車を降り、花売りの少女になりきって街を歩きます。病み上がりの身体には、とても堪えましたが、ウィルに会いたい一心で歩き続けました。
 そうして街の中心部に大きな大きな公爵邸が見えてきました。

「ごきげんよう、アルファート」

 公爵邸の守衛さんにはいつもご挨拶していますから顔なじみです。ものすごーく驚いた顔をされたかと思ったら、きょろきょろと回りを観察し始めました。落ち着きのない方ですね。

「ローズお嬢様!おひとりで?!護衛は?!お怪我は?」
「ええ。一人で参りましたの。ウィルに会いたいの。ロバート執事長にお願いしてくださるかしら?」

 公爵邸の執事長も顔なじみです。皆さん私がお花を咲かせて渡すと、にっこり笑って喜んでくださるので大好きです。

 アルファートは慌てて門を開け、駆け付けたロバートによって私は公爵邸へ入れてもらえました。
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