訳アリ令嬢ですが、憧れの公爵様に溺愛されています!
 たった一人で公爵邸に来た幼い子供を追い返す程、公爵様は鬼ではありません。
 私は無事、公爵邸の豪華絢爛な応接室に通され、ウィルのお母様とお茶をいただくことになりました。

 その間、公爵様は大慌てで伯爵邸に使いを出し、私が1人で訪ねて来たことを知らせたそうです。
 我が家はその頃、伯爵家総出で私の捜索をしており、もう少しで誘拐事件として新聞に載せられるところでした。

 一人旅で疲れた身体に、甘いお菓子を補給していたところ、応接室の外が騒がしくなりました。そして、荒々しくドアが開くと、会いたかったその人が慌てた様子で入室しました。

「ローズ!!!」
「ウィルッ!!!」

 パパパパパパパパパパパッ!

 ウィルにやっと会えた嬉しさが込み上げ、私の魔力で、応接室中にお花が咲き誇りました。

「…わぁ、ローズのお花だ。」
「ウィル!私のお熱は下がりました!だからまた、気にせず私のおうちに遊びにきてね!森へは二度と行きません!だからまた私と遊んでほしいの!」
「ローズちゃん…」

 ウィルのお母様が涙ながらに私を見つめています。みんながそういう、痛々しいっていうお顔をして、私を見てくるけれど──。

「私のお胸の傷は、お花みたいな形なのよ。とっても可愛いの。それに、お花の妖精さんたちが、薬草を沢山くれるから、あっという間にお熱も下がったのよ。もう痛くもありません!ウィルはレオン兄様よりも優しいから、気にしてるんだと思って、直接会いにきましたの!」

 そう言って、ウィルが好きだと言っていた薔薇を一輪出しました。

「…ありがとう。僕のレディ。」

そうしてギュッと抱きしめてくれたのです。
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