訳アリ令嬢ですが、憧れの公爵様に溺愛されています!
 
 次に転移したのは、公爵の小高い丘。小さな草花が咲き誇り、木は丘の上に一本だけ。
 公爵領の豊かな街並みが見渡せる、私の大好きな場所です。
 幼い頃はレオンお兄様とウィルと三人でピクニックをしたなぁ。懐かしい思い出の大切な場所。ウィルも覚えていてくれたのでしょうか。

「懐かしいですね。」
「あぁ」

 短く私の呟きに応えたウィルは、優しく微笑んでくれました。転移した状態のまま景色を眺めているので、まだウィルの手は私の腰に回されていて、背の高い彼は私を見下ろす形になっています。密着度にドキドキしてしてしまいます!

 思わず俯いた先に、自分の手が見えました。いつもと違うのは、薬指に光る、金の指輪。

「あ、あの…、薔薇の…台座…。」
「ローズをイメージして作らせた。私と対になっている。」

 そう言って私の目の前に彼の左手が差し出されました。まだ魔法石のはまっていないその台座には、私のものと左右対称になった薔薇が彫られていて、大変美しい造りになっています。

「い、いつから準備されていたのですか?婚約は昨日決まったことなのに、驚きました!」
「気に入らなかったか?」
「いえ!あの、とても、素敵です…。」

 むしろ、すごく気に入っています。私はお花が、中でも薔薇が一番大好きです。自分の名前と同じ花ですし、彼が好きだといっていた花でもあるから。もう覚えていないかもしれませんが。

 この素敵な指輪に、他でもないウィルと、お揃いで、お互いの目の色の魔法石を埋め込む予定だなんて!本当に婚約するみたいで、信じられません!
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