訳アリ令嬢ですが、憧れの公爵様に溺愛されています!
 私が9歳になったある日、森で迷子になってしまった。
 私とレオンとローズの三人だけで森に入ってしまったのだ。夜になっても森を抜けだすことが出来ず、寒さに震えながら救助を待った。

 火魔法はその前日に習得したばかりで、まだ完全にコントロールは出来ない状態だった。
 しかし、私は前人未踏の3属性の魔法を操ることになり、とても誇らしかったのだ。
 そして、寒さで震えるローズをなんとか温めたいと願ってしまった。
 力を使った結果、魔力が暴走し、恐ろしいほど高い火柱が上がった。そして、気付けばローズの胸が焼け爛れていた。

 目の前で最愛の少女が自分の魔法で──!

「ローズ!!ローズ!!ローズ!!!」

 訳も分からず彼女の名前を叫んだ。

「お、落ち着け!ウィル!水魔法だ!水をかけろ!」

 足を負傷して動けなかったが、そこにレオンがいて本当に良かった。その言葉で冷静さを取り戻し、水魔法をかけた。冷たくなれ、もっと、冷たく!ローズを!助けたい!

 傷は冷やしたものの、回復魔法はやり方すらわからない。何も出来ない自分が悔しくてたまらず、レオンとともに泣きながら救助を待った。3属性の魔法を操ることが出来たって、愛する人を助けられないなら意味がない。このまま彼女を失ったらと思うと、震えも止まらなかった。レオンも静かに泣いていた。

「…ウィル…、なかないで…ください…」

 意識を失っていたローズが少しだけ目を覚ました。かなり痛むのか、唸りながら、それでも私を励まそうとしている。

「ローズ!がんばれ!きっと、助けが来るから!」

 私とレオンのひどい泣き顔をみて、力のない笑顔を振りまくと、痛みに耐えながら、彼女はまっすぐこう言った。

「…お兄様泣かないで…。」
「…ウィル、すき。だいすき…です。」

 彼女が再び意識を失い、私たちは再びまた泣いた。そうして声を上げて泣いているのを聞きつけて、公爵家の兵が私達を発見したのだった。
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