訳アリ令嬢ですが、憧れの公爵様に溺愛されています!

「ウィリアム様は若い。この先学園生活や夜会で様々な令嬢と出会うでしょう。ローズより美しい娘もいるかもしれない。」
「ローズは私にとって最も美しい存在なので、全く想像出来ませんが…仮に見目麗しい令嬢が居たとしても、私の心は移りません。」

 伯爵の言葉を即座に跳ね返したが、反応は良くない。何故だ。
 その疑問に応えるべく、伯爵は重い口を開いた。

「…あの子には魔法の上達は望めないのです…。ウィリアム様の魔法を受けたから、無意識に魔法に恐怖心が残るだろうと医者に言われました。過去にも類似した事例があったそうですが、皆魔法が事故時以上の能力にはなれなかったそうです。…あの子は、傷痕を抱え、魔法も上手く使えず…生きていかねばならない。それは、とても、大変なことでしょう。」

 魔法を受けた後、そんな後遺症が残るだなんて知らなかった。傷痕だけでなく、心にも影響を与えるだなんて。その事実にショックを受ける。

「ウィリアム様のことは幼い頃から存じ上げていますが、我が王国だけでなく、諸外国からも注目される魔術師になるでしょう。しかも貴方は見目麗しく、公爵家の後継です。ありとあらゆるご令嬢や貴族が放っておかない。そのような人気者の婚約者に私の娘が選ばれたなら…どうなると思いますか?」

「…っ」

 言葉を失った。私に選ばれることが、ローズの負担になるかもしれないなんて。
 彼女に注目が集まれば、公爵家の嫁を望む貴族に狙われる可能性があるのだと、その時になって初めて思い知った。
 横にいる父上を伺いみると、優雅にお茶を飲んでいる。助け舟をくれる予定はないようだ。

「爵位も実力も全て、貴方のものになって、誰に何を言われても何をされても跳ね返し、娘を守れると約束してくださらなければ、婚約は承諾できません。」
「わかり…ました。」
「貴方の心が変わっても、私達は何も咎めはしません。今日のお申し出も、ローズには秘密にしておきます。私達は何も約束していません。」
「!!…では、伯爵のお心に刻んでおいてください。私はローズを愛していると。」

「私に告白されてもねぇ。」と笑う伯爵。レオンはやはり、面白いものをみたという顔をしていた。
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