訳アリ令嬢ですが、憧れの公爵様に溺愛されています!
 帰りの馬車に乗りながら、私は母上に成り行きを説明した。母上はすぐに婚約とは至らなかったことをとても残念がってくれたが、私はさらさら諦める気はなかった。

「ウィル、私は早めに引退することにしよう。」

 父上が急に言い出した早期引退計画に驚く。

「ローズは可愛い。デビューしてしまえば、傷など関係なく男が群がるぞ。」
「…っ」

 それは困る。私は恐らくローズでなくてはダメだ。彼女もそうであってほしい。そうだとしても、彼女の周りにほかの男が群がると思うと我慢ならない気持ちになった。

「ローズが学園を卒業するまでに、魔導師としても公爵家跡取りとしても大成しなさい。無理か?」

 父上が示した計画に未来が一気に明るく、道筋が見えた気がした。

「いえ、必ずやり遂げます。」
「お前が若いから他の令嬢にうつつを抜かすなどと、アークライトは言ったが、私はお前の気持ちが覆ることはないと思っているよ。」
「はい。信じてくださってありがとうございます、父上。」

 父からの信頼が素直に嬉しい。アークライト伯爵に拒否されたことで萎んだ気持ちが、ゆっくりと回復していく。

「ローズちゃんは可愛いものね。早めにゲットしないとね!」
「そうです、可愛いです。世界一です。」
「いや母様が世界一だぞ?」
「申し訳ありませんが、ローズの方が格上かと。」
「あらあらまぁまぁ」

 こうして公爵家では、ローズを私の妻に迎えることが決定事項となった。
< 30 / 100 >

この作品をシェア

pagetop