訳アリ令嬢ですが、憧れの公爵様に溺愛されています!
 前公爵様のご尊顔は逆光でよく見えません。私達、フルネームでやっちゃいましたけど、大丈夫でしょうか?後方には両家親族がいますが、皆様も私達の宣言を聞いて、ため息をついてたらどうしましょう。ちょっと落ち込みますね…。あとでデイジーに癒してもらおう。

「では、石に魔力を注ぎ、台に石を固着させその誓いを強固なものにせよ。」

 考え事をしていましたが、そんな場合ではありませんでした。

 前公爵様のお言葉で私は顔面蒼白になりました。私は魔法学園に通っている頃から、花魔法以外は本当に失敗ばかり。他の属性の魔法はもちろんできませんし、何かに魔力を流すのでさえ苦手です。こんな、石を台に固着させるだなんて!花を咲かせる何十倍も難しく感じます。

 急に青い顔になった私に気づいたのか、ウィルが小声で「どうした?」と聞いてくださいました。

「わ、私、魔力を流すのが下手で…!」

 こんなことも出来ないのかと、失望させてしまうでしょう。やはり王国髄一の王宮魔術師の嫁が、こんな出来損ないだなんて、婚約破棄になるでしょうか!?あああ、どうしましょう。どうお詫びすれば!?

「落ち着け。台座に魔法石を当てながら、石の中に花を咲かせてみろ。」

 そう言いながら、ウィルは私の手を取り、台座に彼の瞳の色の魔法石を当て、手をかざしました。
 私の手に優しく温かい少量の魔力が流れてくるのがわかります。柔らかな光が二人を包みました。とても心地の良いふわふわとした感触です。
 光が収まると、台座に魔法石が固着され、魔法石の中に白い小さな小さな薔薇が咲いていました。

「まぁ…素敵…!」

 私の左手に、赤い指輪が完成しました。薔薇の台座に赤い宝石、その中には白の小さな薔薇。ステンドグラスからの淡い光に照らされて、きらきらと反射する様は見たこともないほどの輝きでした。
 こんなに素敵な婚約指輪をする日が来るなんて…。
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