訳アリ令嬢ですが、憧れの公爵様に溺愛されています!

☆いきなり別居ですか

 伯爵邸に戻ってから、メイドのアンナが激情して大変です。

「ああ!お嬢様の純白ドレス!公爵家御用達のドレスデザイナーならば、それはそれはお綺麗でしたでしょうに!見たかったです!でも、本当はっ!私がご準備して差し上げたかったぁぁ!!!」

 床に転がらないで!お顔をあげて!涙を拭いて!メイド長が白い目で見ていますよ!

「アンナ、ごめんなさい!見せてあげられなくて……。」
「お嬢様のせいではありません!公爵様ったら、衣装まで準備万端とかやりますね!…じゃなくて!それよりも!来週末にはここを出ていかれるだなんて…!」
「アンナ…」

 声を上げて泣くアンナに駆け寄り、抱きしめました。私も怒涛の展開に振り回されてうっかり婚約式まで終えましたが、まさかこんなに早くこの家から出ていくことになろうとは思いもしませんでした。この温かな家族と家族同然の使用人の皆様と離れ離れで暮らす日がくるなんて…!

 そして当然、私が手入れしている庭園も、温室も、今まで通りにはお世話できないでしょうね。

 気づけばメイド長も、ほかのメイドの皆さんも、涙ぐんでいます。寂しさがこみ上げてきます。だけど、泣くよりも、皆に笑ってもらいたいです。

パン!パパパパパパパパパ!

 メイド一人ひとりに可愛らしい黄色の花を出しました。

「感謝の気持ちのミモザのお花です。今までたくさんお世話をしてくださってありがとうございます。これからはお父様やお母様、お兄様をよろしくお願いいたしますね。皆、大好きよ!」
「お嬢様…!」

 アンナをはじめ、メイドの皆さんに囲まれて、やっぱりしばらく私達は涙を流したのでした。

「ズビッ、ズズズ…お嬢様、私、公爵家にお供させてもらえるよう、奥様にお願いしてみます!公爵家の使用人の皆様もいい方ばかりですけれど、油断は禁物ですし!!」

 ひとしきり泣いたあと、アンナがそう言い出してくれました。何の油断が禁物なのやら私には分かりませんが、アンナが一緒に来てくれるのならば、とっても心強いと思い、私は笑顔になったのでした。

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