訳アリ令嬢ですが、憧れの公爵様に溺愛されています!
 それから3日が過ぎた頃、私は庭のメンテナンスの引継ぎに大忙しでした。荷造りはアンナが率先して準備してくれました。

 今は最後に大好きな薔薇にお水をあげています。
 あとひと月もすれば満開になるであろう、このローズガーデン。見に来れたらいいけれど。

「元気でいてね。またお世話しにきますね。」

 薔薇に話しかけていると、妖精のデイジーが現れました。

『ローズ、お引越しするの?』
「まぁデイジー!会いたかったの!そうよ、私、ウィルのおうちに行くことになって。」

 デイジーはここ数日現れず、なかなか引越しのことを伝えられずにいたのです。
 私がこの家を出ることを知って、デイジーはとても暗い顔になってしまいました。小さな手を自分で握りしめて、下を向いています。

『……ここへはもう来ないの?』
「いいえ、実家ですもの。落ち着いたら遊びに来ます。だけど……あの、デイジー、もし、よかったらなんだけど……」

 私がもごもごと話していると、目の前まで飛んできてくれました。思わず手を広げると、その上にそっと着地してくれます。デイジーが手の上に乗ると、とても良い香りがしました。その香りで少し勇気が出ます。

「あのね!デイジー!公爵家にも来てくれないかしら?時々でいいの。公爵家のお庭も私がお世話して、きっと素敵なお庭にするわ。だから、私に会いに来てくださらない?貴女になかなか会えなくなるだなんて、私……」

 妖精は気に入った場所に住み着くものです。人とともに行動する妖精もいますが、花の妖精は自分の化身の花とともにその場所で暮らすことを好む習性があります。

 だけど、幼い頃からずっと友達だったデイジーに会えなくなるのは、とても寂しくて。思わずそのようなわがままを言ってしまいました。

『……ローズ!ありがとう!デイジー、これからも遊びにいくよ!』
「まぁ!本当?!いいのかしら?」
『うん!土の精霊王様に相談してみる!きっと良いよって言ってくれると思うよ!』
「ありがとう。大好きよ、デイジー。」
『あのね、デイジーもローズがだーいすきだよ!』

 私は小さな小さな友人と公爵家に移り住むことになりました。
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