訳アリ令嬢ですが、憧れの公爵様に溺愛されています!
「アークライト家のお庭はご存じで?」

 このあたりの庭師さんなら必ずやお耳に入っているはず。

「あの名高い優美な庭じゃな。わしは直接見に行ったことはないが、庭師仲間がさんざん騒いでおったから知っておる。」
「申し遅れました。私はローズ・アークライトと申します。あの庭園を仕上げたのは私ですわ。庭師はわたくしです!」
「はぁ?」

 お爺様が素っ頓狂なお声を出してやっとこちらを見てくださいました。そこでポンっと花を出します。「お近づきの印に。」と小さなブーケにして渡しました。

「ほう。魔法で花を。…ではその伯爵家の庭園も魔法で?」

 挑戦するような、値踏みするような視線で私に質問を投げかけます。試されている、と肌で感じますが、淑女たるもの、笑顔を崩しません!

「いいえ、お花は出せますが、庭園のお花は全部手作業でお世話しておりましたわ。土の栄養を少し魔法で良いものにしてあげたり、雨風の強い日は加護をつけたりしましたが、基本的には種や苗を土に植え、花が咲くまで間引きしたり虫が来ないように工夫したり、雑草を抜いたり。私は花の妖精が見えるので、声を聴きながら、望むままにお世話していました。」

 お爺様は私の話を神妙に聞いていたかと思うと、徐に立ち上がり、「…こちらに来ておくれ。」と私を別の場所へいざないました。
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