訳アリ令嬢ですが、憧れの公爵様に溺愛されています!
 お義母様は、暫く私の姿を称賛してくださった後、ふいにこう言いました。

「ローズちゃんは、私の自慢の娘よ。貴女のことを悪く言う人がいたとしても、私はずっと味方よ!覚えておいてね!」
「はい……ありがとうございます。」

 私のことを悪く言う人が、いるのでしょうね。私の耳に入らないようにお義父様とお義母様が止めてくださっているのでしょう。

 そのお心遣いを察して、この優しい方たちにいつか恩返しをしなければ、と決意を新たにします。
──だけど、魔法の能力も弱く、ただの伯爵家令嬢の私が、何ができるのでしょう。ウィルが帰還して、胸の傷を見たら……どうなるのでしょう。

 そんなことを考えていた時、廊下からバタバタと大きな足音が──。

「ローズ!!」

 その場にいた全員が開いたドアに注目しました。そこには、明日の夜帰還される予定のウィルが、息を切らして立っていました。

「ウィル?」

 既に着替えた後ですが、散々ドレスを試着していたので、色々な衣装や装飾が出されたままの状態です。着替え中だったと気づいたのか、勢いよく入ってきた割に、みるみると顔が赤くなります。いつも完璧な彼らしくない姿ですが、間違いなくそれはウィルで。

パパパパパパパパパパパパパパパパ!!

「まぁまぁ」
「あらぁ!」

 その場にたくさんの花が咲き乱れました。お義母様とアンナが驚いた声を発しました。もちろん犯人は私です。

 目には涙が溢れ、前がよく見えないので、どんなに咲かせてしまったかは分かりません。
 だけど、無事に帰還されたことが嬉しくて、やっと会えたのが嬉しくて、その想いを止めることなどできません。

「ローズ……」
「ウ、ウィルッ……おかえりなさいませ……」

 普段の私ならば考えられませんが、泣きながらウィルに駆け寄ってしまいました。内戦を鎮静化するために戦地に赴いていたのです。段々と頻度が減った手紙は、何か悪いことが起きているのではないかと本当は不安で仕方ありませんでした。

 駆け寄った私を、優しくウィルが抱き留めてくれ、そして力強く抱きしめてくださいました。久しぶりの彼の胸はやはり硬くて、大きくて、男らしい香り。

「ご、ご無事でっ、ひっく、よかった……ですっ!」
「身を案じてくれてありがとう。内戦といっても国民相手だ。手荒なこともなく、魔法もほぼ使わずに終了したよ。だから危険なことは何もなかった。」
「よかったっ……!」

 咲き乱れた花達の中心で、ウィルが無事帰ってきたことを私は心から喜んでいました。
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