訳アリ令嬢ですが、憧れの公爵様に溺愛されています!
一度出始めた涙はそう簡単に止まりません。そして、お義母様やアンナ達が部屋にいてこの状況を見られていることを思い出すと、顔があげられなくなりました。どうしましょう!恥ずかしいです!
その時、お義母様が刺々しい口調で、ウィルを問い詰めました。
「おかえりなさい。ウィル。……明日の夜のご帰還だと聞いてましたけど?」
「ローズに一刻も早く会いたいので、軍は副長に任せて、転移して帰ってきました。」
転移は便利ですが、近距離であることと、同時には3人までしか運べないそうです。王宮魔術師の中でも転移を自由自在に操れるのはウィルだけなので、今回のような軍で行動をとる場合は、陸路で往復するよりほかないそうなのですが……。まさか一人で転移するとは。
「ここはローズの部屋ですよ。レディの着替えが済み、メイドから許可をもらうまでは勝手に入室してはなりません。貴方も公爵なのですから、きちんとわきまえなさい。」
お義母様、かっこいいです!しかしウィルは悪びれる様子もなく、「すみません」と口だけで答えて私をぎゅうぎゅうしてきます。あ、頭のてっぺんにキスするのはやめてください!
「では、二人にしてもらえますか?」
ウィルは有無を言わさぬ態度で私を抱き締めたまま、皆さんに退室を促します。
「……わかりました。皆さん行くわよ。」
「あ、あの!お義母様!ありがとうございました!」
泣いてボロボロの顔が恥ずかしいけれど、ウィルの胸から顔をあげて、お礼を言いました。お義母様はゆっくり微笑んで、メイドたちとともに退室していきました。