嘘と愛
エピローグ
今から22年前。
桜の花が綺麗に舞い散る季節の中、とても可愛い双子の赤ちゃんが生まれた。
双子の赤ちゃんは女の子で、雪のように白く透き通る肌をしていて、どこかの国のお姫様のようなとても上品な顔立ちをしていて不思議な感じを受ける赤ちゃんだった。
綺麗な桜の花びらと春をイメージして二人には桜(さくら)と椿(つばき)と名付けられた。
父親の宗田幸喜(そうだ・こうき)は、娘の誕生に大喜びで感涙して暫く涙が止まらなかったくらいだった。
妻であるディアナも喜びいっぱいで、幸喜がつけてくれた娘の名前に感謝をしていた。
病院内でも、とても可愛い双子の赤ちゃんの誕生が噂されるくらいで、桜と椿がいる空間は別空間のように輝いているくらいだった。
だが…。
桜と椿が産まれて三日後。
病院内に何者かが忍び込み、桜と椿は誘拐されてしまった。
警備が手薄な深夜を狙っての犯行だった為、目撃者は少なく、目撃証言も曖昧な事が多く犯人の足取りを掴む事にも困難で捜査にも時間がかかっていたが。
3日間の捜索の末、椿はいつのまにか病院の入り口に置かれて戻って来てきていた。
しかし桜の方は一向に見つからないままで、手がかりすら分からないままだった。
桜の捜索が続けられる中、ディアナは椿と共に退院した。
幸喜は何故桜だけが見つからないのかと、疑問を抱いていたが、ディアナはどこか冷めているのか気に止めていない様子で自宅に戻ってもあまり育児に手をかけることなく同居している幸喜の両親に任せっきりだった。
退院から2週間ほど経過した頃。
病院の裏庭から、顔の判らない赤ちゃんの遺体が発見されたと連絡が入り、その赤ちゃんの血液型と行方不明の桜の血液型が同じである事が判明した。
そして、産まれた時期も桜が産まれた時期と同じである事も判明した。
傍にネームリングが落ちていて「桜」と書かれていた事から、行方不明の桜に間違いないと断定された。
連絡を受けた幸喜は納得できず、もっと詳しく調べてほしいと言っていたが、警察では桜に間違いないと断定し何者かに殺害されたとされ、そのまま死亡扱いにされた。
ディアナは特に驚く事もなく「しょうがないわね」と冷めた言葉を発するだけで気に止めていない様子だった。
犯人への手がかりはなく。
理不尽なまま桜の葬儀が行われた…。
納得できないのは幸喜だけでディアナは冷めた対応…。
自分が産んだ子供が殺されたというのに、悲しむ事もなく「仕方ないわね」と言っているディアナに、警察もちょっと疑念を抱かなかったわけではなかった。
葬儀が終わっても犯人は一向に見つからない。
幸喜は悲しみと怒りの中、犯人の手がかりはないのかと何度も病院の裏庭を見に来ていたが、何ひとつ手がかりは見つからなかった。
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