嘘と愛
静かになったリビング。
幸喜はそっと大雅を見た。
大雅は食べ終わって立ちがり、空いた食器をシンクに置きに行った。
「大雅、ちょっと話があるんだが」
「なに? 」
「お前、警察官の友達まだいるだろう? 」
ん? と、大雅は幸喜を見た。
「悪いが、調べて欲しい人が居るのだが」
「誰? 」
「金奈警察署の刑事課に、水原零と言う刑事がいるのだが」
「刑事? 」
「ああ、その人の事をちょっと詳しく調べてもらえないだろうか? 」
「ふーん。一応、聞いてい見るけど。俺が警察離れて数年だから、新人だったらわかんねぇよ」
「それでも構わないよ」
ちょっと冷めた目で幸喜を見て、大雅はリビングを出て行った。
自分の部屋に戻ると、大雅は電話をかけた。
「あ、もしもし…。あの、ちょっとお話があるのですが。…じゃあ、例の場所で待っています。…はい、その時間で構いません…はい…じゃあ、また後で」
電話を切ると、大雅は一息ついてベッドにゴロンと寝転んだ。
お昼を過ぎた頃。
大雅は出かけて行った。
ラフなブルー系のシャツに、紺色のジーンズに白系のスニーカー。
やっと上着が軽くなり暖かくなった今日この頃。
大雅が向かった先は、ちょっと静かな住宅地にあるこじんまりとしたカフェ。
個室のようになっていて、話し声がほとんど聞こえない空間が作られている。
一番奥の個室にとても綺麗な女性が、サングラスをかけて座っている。
黒いつばの広い帽子をかぶって、黒いワンピースに黒いカーティガンを羽織っている女性は、見ているだけでひ引き寄せられそうになる。
見えている髪は綺麗な金色の髪。
ほっそりとした面長の顔に、筋の通った高い鼻。
唇はプルッとして魅力的。
珈琲を飲みながら、女性は誰かを待っている。
「お待たせしてすみません」
大雅がやって来た。
女性は大雅にそっと微笑んだ。
大雅は女性の前に座った。
珈琲を注文して、大雅はカバンから封筒を取り出してテーブルの上に置いた。
「これ、頼まれていたものです」
「有難う…」
封筒を受け取り、女性は鞄にしまった。
「話って何かしら? 」
「はい。…零さんが、父さんと会ったようです」
「え? 」
「事件の関係で、聞き込みに行ったようですが。父さんが、零さんを気にしていて。俺に、調べて欲しいと言い出してきました」
「そう…」
そっと顔を背けて、女性は黙ってしまった。