嘘と愛

 
 翌日。
 後は自宅療養でいいと言われ退院したイリュージュ。

 駅までの道のりを歩いていると、2人の男性刑事が歩み寄ってきた。

「藤崎イリュージュさんですね? 」
「はい」

「乳児誘拐並びに乳児殺害容疑で、逮捕状が出ています。署までご同行下さい」

 一瞬、イリュージュは頭が真っ白になった。 
 だが夕べディアナからの電話で「責任取ってもらう」と言われてた事を思い出し、これか…と半分あきらめた状態で同行した。

 否定すれば本当の事を話さなくてはならない。
 調べれば分かってしまうことかもしれないが、ここは黙秘を透すか認めるしかないのだろう。

 そう思ったイリュージュは、取り調べに素直に応じて全てを認め自分が犯人だと言うしかなかった…。

 刑を下されたイリュージュは、何もかもどうでもいいと思い放心状態だった。
 その為、刑に服しながらも毎日のように倒れてしまい殆ど警察病院に入院していた。

 そんな中。
 とても優しい女性刑務官がイリュージュに「貴女、もしかして出産したばかりなんじゃないの? 」と声をかけてくれた。
 イリュージュは事実を隠し通すために否定したが、母乳が滲み出てきた事から女性刑務官がイリュージュが出産後である事を確信した。

 それがきっかけで、本当は姉ではなくイリュージュが子供を産んだのではないかと言い出した刑事もいた。

 
 そうこうしているうちに、瑠璃が帰国してきて事実を警察に打ち明けに来てイリュージュの刑は取り下げられ無実で釈放されることになった。

 だがイリュージュは、事件も解決して幸喜は子供と一緒に幸せに暮らしていると思った。
 その為、誤認逮捕だったことは公表しないでほしいと頼んだ。
 そして真犯人が見つかるまでは、この事は公にしないでほしいと頼んだのだ。

 警察の捜査は振出しに戻り、証言した助産師にもう一度事情を聞きに行ったが行くへが判らず
 、ディアナが出産したと証言した医師は事故死していて事件は迷宮入りになってしまった。

 それからイリュージュは金奈市を離れ、北の地で静かに暮らしていたが、数年経過してもう一度弁護士になる為、名前を改名して小賀楓となり国選弁護人として被告人の弁護を引き受け細々と暮らしていた。

 そんな時、大雅と偶然出会いお互いが歩み寄るようになった。
< 102 / 152 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop