嘘と愛
大雅は幸喜が養子として宗田家に迎えてくれた話をして、椿と言う子供は幸喜とは親子関係がないようだと楓に話していた。
あの誘拐事件で何かが大きく変わったのだと楓は思い、大雅と一緒に水面下で真相を調べていた。
決して自分の存在を幸喜に知られてはいけないと言って、大雅には絶対に話しをしないように固く口止めしていた。
しかし大雅は、勘が鋭く楓の深い想いを感じていた。
そしてある日、大雅は楓にこう話した。
(父さんは今でもずっと、貴女を愛していると思います。…ディアナは家にいないし、ずっと海外に行っているか外泊ばかりしています。それでも、父さんは何も言わないで俺と椿を育ててくれていました。仕事も大変なのに、ちゃんとご飯も作ってくれて学校の行事にも来てくれていましたよ。椿と父さんに親子関係がないようですが、それでも大切に育てているのは。もしかしたら、父さんも本当の事に気づいているのかもしれません。ディアナではなく、子供を産んだのは貴女なのだと…。父さんの愛は、とっても深いと俺は思います。一度愛した人を、そんなに簡単に手放したりしない人だと思うのです。貴女が、誘拐犯だとしても乳児殺害犯だとしても、父さんが貴女を愛する気持ちは絶対に変わらないと思いますよ)
大雅にそう聞かされて、楓は気持ちの中にちょっただけ期待感がなかったわけではなかった。
今、目の前にいる幸喜を見ていると。
大雅が言ってくれた事が本当の事ではないのかと、思えてくる。
だけど…。
また私が近づくと、きっと不幸にしてしまうだけだから…。
そう思い、楓は想いを奥深い場所へしまおうとしていた。