嘘と愛
「もしかして、零さんはあの事件を調べようとしているのでしょうか? 22年前の、あの事件を…」
「それは…ないと思うわ。あの子は、何も知らないはずだもの」
「でも、先日殺害された助産師。あの人は、22年前のあの事件の関係者ですよ」
「そうね…」
「なんだか俺は、嫌な予感がするのです」
「心配する事はないわ。22年前にあの事件は、もう終わっているもの。零が、何かを聞きこみに行ったとしても無関係だと思うわ」
「だといいのですが…」
「あなたは、引き続きあの子を見守ってちょうだい。そして、これ以上、あの子とあの人を接触させないようにして」
「判りました…」
女性はスッと立ちあがり、伝票を手に取った。
「有難う教えてくれて、これ払っておくわ。貴方も無理をしないようにしてね」
それだけ言って、女性はそのまま去って行った。
カフェを後にして。
大雅は駅前まで戻ってきた。
ショッピングモールでもふらついて帰ろうと思った大雅。
だが…
歩道橋の上に佇んでいる零を見かけ、立ち止まった。
今日の零は普段着で、イエロー系の薄手のセーターに黒いズボンに白系のスニーカーを履いている。
相変わらず堅物そうなメガネをかけている零だが、スーツ姿の時より若々しく見える。
佇んでいる零が気になって、大雅は歩み寄って行った。