嘘と愛
「2度目に貴女を見たのは、貴女が高校生の時です。母が陰ながらずっと貴女を見守ってきたのです。初々し学生服を着ている貴女を見た時、あの時の赤ちゃんだって僕には分かりました。なので、その時から見ていました。しばらく見れない時もありましたが、金奈警察署で再会した時はとっても嬉しかったですよ」
スーっと聖司の手が、零の顎に伸びてきた。
そっと零の顎に手をかけて、聖司はニコッと笑った。
「…気を付けて下さい。…あの、宗田大雅は貴女を利用している」
「え? 」
驚き動揺した目をする零に、聖司は真剣な眼差しを向けた。
「大方、一連の真相が明らかになれば。宗田ホールディングにも大きな影響が出るでしょう。真犯人は、妻のディアナ。22年前の誘拐事件をでっちあげ、真相を語る恐れのある者を全て殺してきた。貴女の育ての父親、水原隆司もディアナが殺害した可能性が高い。それが公になれば、どうなるか貴女にも判るはずです」
ゆっくりと、聖司の顔が近づいてきた…
零の頬に聖司の息がかかるくらいに近くなった…。
「…貴女が22年前の誘拐事件。そして、今回の助産師殺害事件の捜査を辞めてくれれば彼は随分と助かりますよね? 何と言っても、将来は宗田ホールディンの社長になる人ですから」
ズーンと何が重い空気が、零にのしかかって来るのを感じた。
大雅が利用している?
将来の社長の座を護る為に?
(零ちゃんが望むなら、宗田ホールディンを辞めてもいい)
大雅はそう言っていた。
あの言葉に嘘はないと感じた。
(もう刑事なんて辞めろよ)
大雅は最近にそう言った。
それは身の安全を案じてだと大雅は言った。
零の中で迷いが生じた…。
そのすきを狙って。
聖司は不意打ちのキスをした。
驚いた零は、首を大きく振って聖司を振り払おうとしたが。
強い力で抱きしめられ、振り払えなかった。
強い力で抱きしめている聖司は、そのまま唇を零の首筋に這わせてゆき。
チュッと、零の胸元に吸い付きキスマークを付けた。
「何するんですか! 」
やっとの思いで、零は聖司を突き放した。