嘘と愛

「僕の愛の証をつけたのですよ。あの男より、僕の方が貴女を幸せにできますから」
「バカな事を言わないで下さい! 」

 吸い付かれた場所から、零は聖司の強い嫉妬心を感じて胸が苦しくなった。

「僕は貴女が産まれた時から、ずっと思い続けてきました。あんな男に、負けたくありません! 」


 聖司の言葉が刺さって来る…。
 これは愛じゃない…ただの憎愛だ…。

 胸に苦しさを感じて、零は何も言えなくなった。

「零さん。…いいえ、桜さん…。僕の事を、見て下さい。…22年もずっと、貴女を想っているのですよ」 

 ギュッと零の両腕をつかんで、聖司はちょっと狂ったような目で見ている。

「こんなに一途に想っているのは、僕だけです。誰にも負けません、この想いは」
「やめて下さい…私は…」

「貴女が刑事になったのは、偶然じゃない。僕と会うためですよ」
「違います! やめて下さい! 」
「違わない! ちゃんと、僕を見て下さい! あんな男に、騙されないで下さい」

 嫌がる零に、聖司は無理矢理迫ってゆく。


「やめなさい! 」

 声がして、聖司はハッと動きを止めて振り向いた。

 振り向いた先にいたのは楓だった。
 いつもはめているサングラスは外している楓。

 聖司は楓を見て驚いた。
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