嘘と愛
楓を見た時、零の中でなんとなく懐かしい気持ちが込みあがったのを思い出した。
「ねぇ椿。お母さんの名前って、何ていうの? 」
(お母さんの名前は…今は、小賀楓。本当の名前は、藤崎イリュージュよ…)
「楓? …イリュージュ…」
どちらの名前にも、零は覚えがあった。
どちらも…ディアナの妹の名前だ。
あの時、楓と呼ばれた女性は金色の髪に綺麗な顔立ちの女性だった。
ディアナとは全く違う…。
(桜。お母さんに、会いたい? )
「ええ、もちろんよ」
(…近いうちに会えるわよ、きっと…)
「え? 」
(判るの…。お母さんも、桜に会いたいって思っている…そして、ずっと桜を護ってきたんだよ…)
「お母さんが? 」
(桜…お母さんも、お父さんも。…ずっと、桜の事を…見守っていてくれた。…だから、桜は…幸せに暮らせた…そうでしょう? )
「うん…」
(…私、養女だったけどすごく幸せだった。…だから桜も、これからは自分が幸せになる事を考えて。…心から愛する人と幸せになって…)
「椿…。貴女も元気になって、心から愛する人と幸せになってよ」
(…うん…。いつも…桜の幸せを…祈っているよ…)
「私も、椿の幸せを祈っている」
(ありがとう…桜…。一緒に産まれて来て…本当に良かった…)
「私も、椿と一緒に産まれてきて良かった」
(…桜…またね…)
最後のほうは、なんとなく力尽きるような声で電話は切れた。
どこか、零は重たい空気を感じた。
椿は高校生の時から桜の親友であった。
体が弱く入退院を繰り返す椿だったが、将来は育ての父親のように弁護士なりたいと話していたが病弱で学校に行くことが出来なくなり療養施設に入った。
しかし勘が鋭く未来が見える椿が、零に取り巻く黒い影と零の大切な人に取り巻く黒い影を察知していた事から、ずっと宗田家にいる椿の事をマークしていた。
でっち上げた証拠写真が偽物である事や、栞を利用していた椿の証拠を父に頼み調べさせていた事から零は椿から本当の証拠を常に送ってもらっていた。
椿の直感と特殊な能力は、幸喜から受け継がれたものかもしれない…。
22年前の乳児誘拐事件も乳児殺害事件も、椿には真相が見えていたが、あくまでもそれは見えない世界から見える事だけで確たる物証にはつながらない事から零が確たる物証を探していたのだ。
署に戻るまでの道のり、零は椿から聞かされていた事を色々思い出しながら歩いていた。
零が署に戻ったのは16時を回る頃だった。
エレベーターで、刑事課に行こうとした時。
聖司が歩いて来た。
なんとなく顔を合わせる事が嫌で、零は目を合わさないようにしていた。
足音が近づいて来て。
零の傍でピタッと止まった。
「ねぇ椿。お母さんの名前って、何ていうの? 」
(お母さんの名前は…今は、小賀楓。本当の名前は、藤崎イリュージュよ…)
「楓? …イリュージュ…」
どちらの名前にも、零は覚えがあった。
どちらも…ディアナの妹の名前だ。
あの時、楓と呼ばれた女性は金色の髪に綺麗な顔立ちの女性だった。
ディアナとは全く違う…。
(桜。お母さんに、会いたい? )
「ええ、もちろんよ」
(…近いうちに会えるわよ、きっと…)
「え? 」
(判るの…。お母さんも、桜に会いたいって思っている…そして、ずっと桜を護ってきたんだよ…)
「お母さんが? 」
(桜…お母さんも、お父さんも。…ずっと、桜の事を…見守っていてくれた。…だから、桜は…幸せに暮らせた…そうでしょう? )
「うん…」
(…私、養女だったけどすごく幸せだった。…だから桜も、これからは自分が幸せになる事を考えて。…心から愛する人と幸せになって…)
「椿…。貴女も元気になって、心から愛する人と幸せになってよ」
(…うん…。いつも…桜の幸せを…祈っているよ…)
「私も、椿の幸せを祈っている」
(ありがとう…桜…。一緒に産まれて来て…本当に良かった…)
「私も、椿と一緒に産まれてきて良かった」
(…桜…またね…)
最後のほうは、なんとなく力尽きるような声で電話は切れた。
どこか、零は重たい空気を感じた。
椿は高校生の時から桜の親友であった。
体が弱く入退院を繰り返す椿だったが、将来は育ての父親のように弁護士なりたいと話していたが病弱で学校に行くことが出来なくなり療養施設に入った。
しかし勘が鋭く未来が見える椿が、零に取り巻く黒い影と零の大切な人に取り巻く黒い影を察知していた事から、ずっと宗田家にいる椿の事をマークしていた。
でっち上げた証拠写真が偽物である事や、栞を利用していた椿の証拠を父に頼み調べさせていた事から零は椿から本当の証拠を常に送ってもらっていた。
椿の直感と特殊な能力は、幸喜から受け継がれたものかもしれない…。
22年前の乳児誘拐事件も乳児殺害事件も、椿には真相が見えていたが、あくまでもそれは見えない世界から見える事だけで確たる物証にはつながらない事から零が確たる物証を探していたのだ。
署に戻るまでの道のり、零は椿から聞かされていた事を色々思い出しながら歩いていた。
零が署に戻ったのは16時を回る頃だった。
エレベーターで、刑事課に行こうとした時。
聖司が歩いて来た。
なんとなく顔を合わせる事が嫌で、零は目を合わさないようにしていた。
足音が近づいて来て。
零の傍でピタッと止まった。