嘘と愛
「水原刑事」
落ち着いた静かな声で声を掛けられ、零はちょっとだけ聖司に振り向いた。
「安心して下さい。もう二度と、先日のような事はしませんので」
穏やかな目をしている聖司を見て、零はちょっとほっとした。
「僕、警察官を辞めることにしました」
え? と、零は聖司に振り向いた。
いつもの爽やかな笑顔を浮かべている聖司だが、なんだか何かを吹っ切ったような表情をしていた。
「これ、僕からの最後の贈り物です」
そう言って、聖司が差し出したのは1通の封筒。
「この中に、ディアナの本当の目的が入っています」
聖司は零に封筒を握らせた。
「それから、大雅さんの事ですが。あの人は、とても誠実な人ですよ。ちょっと変わっているようで、直感が鋭かったり先の未来の事が見える時があるようです。でも、愛する気持ちはきっと一途です。彼もずっと、貴女を見守ってきた一人ですから」
「え? 」
驚いた目をする零にそっと微笑み、聖司は去って行った。
刑事課に戻った零は、聖司から受け取った封筒の中を見た。
封筒の中は、藤崎家の資産表と、家系図だった。
藤崎家の当主は藤崎秀人(ふじさき・しゅうと)。
秀人の家は代議士家系だったが。秀人は別の道を進み医師になった。
日本だけではく海外へも行っていた秀人は、初めの結婚相手はアメリカ人の女医のバレンヌと言う女性だった。
べレンヌと秀人の間に産まれたのがディアナ。
お金持ちの家に産まれわがまま放題で、いつも女王様のように誰かを手下に着けていた。
ディアナが10歳の時、べレンヌが病死して、こから2年間は秀人と2人暮らしだったが、家にはお手伝いさんもいて欲しい物はお金をもらい、好き勝手ができることに、ディアナは不満はなかった。
べレンヌが亡くなり2年後、秀人は再婚した。
アメリカで弁護士をしていた、ベイディアと言う女性で、同じ弁護士だった夫を病気で亡くして5年経過していた。