嘘と愛

 その後。
 ちょっとぎこちない会話をしながら、零と楓は歩いていた。


「零! 」

 呼ばれる声がして、振り向くと大雅がいた。

「大雅さん…」

 駆け寄ってきた大雅は、楓と一緒の零を見てちょっと驚いた目をした。


「ごめんなさい、大雅さん。大切な彼女、引き留めてしまって」
「いいえ…」

 零は不思議そうに楓と大雅を見つめた。

「あ、ごめん。まだ、何も説明していなかった」
「え? まだ話していなかったの? 」

 大雅と楓の会話に、何のことだか分からない顔をしている零。

「あ、ごめん零。俺、楓さんとは5年ほど前からずっと仲良くしているんだ」
「え? そんなに前から? 」

「ああ、だって零は父さんの子供だろ? 」
「え? 」

「そして、俺の妹の椿は父さんの本当の子供じゃないから」

 零は驚いてキョンとしている。

「俺は、全部お見通しって事だよ」

 お見通し? 全部知っていたの? 

 零は楓を見つめた。

「あ、誤解しないでね。私は何も話していないの。でも、大雅さん貴女を見た時に「あの子が父さんの本当の子供だよね」って気づいたようなの」
「そうだったの…」

「私も、物を通して相手の気持ちを感じる事ができるように。大雅さんは、直感が強くて見えないものがちょっとだけ見えるみたいね」
「だからなのね、時々、変な事言っているって思ったのは」


 大雅はちょっと困ったような顔をしていた。

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