嘘と愛
「でもさ、俺から会いたいって思った人は。零ちゃんが初めてだよ」
「そんなこと…」
「じゃあさ、試しにでいいから。俺と、付き合ってくれない? 」
「はぁ? 」
何を言い出すかと思えば…どこまで軽いんだか…。
ちょっと呆れた目で零は大雅を見つめた。
「いいだろう? お試しなんかだら。嫌なら断ってくれていいし、1回会っただけじゃ判らないじゃないか」
「そうだけど…」
「じゃあ、決まりだ。ねぇ、携帯番号教えて」
スマホを取り出して、大雅はニコッと笑った。
とりあえず、零は番号交換だけした。
別にいいや、出なければそのうち諦めるだろうし…。
零はそう思った。
その後、他愛ない話をしてカフェで2時間くらい過ごして、大雅と零は帰った。
大雅は家に戻ると、さっそく零にメールを送った。
特に返事は期待していない、でも大雅は心から喜びを感じた。
水原零…。
父さんが調べて欲しいって言っていた人だけど。
別に教える気はないし…。
俺は、彼女を絶対に護るから…。
窓の外を見て、大雅はそう思っていた。
それから数週間後。
4月から5月になった今日この頃。
新緑の季節になり上着がいらないほど暖かくなっている。
大雅はあれから零にメールを送ったり電話をかけたりしているが、零からは全く反応がなかった。
それでも大雅は何も不安になっていなかった。
仕事の帰りに、零と出会った歩道橋に来てみたり、2人でいったカフェに寄ってみたり。
いつもどこかに零の事を感じている、それだけで幸せな気持ちになれる大雅。
そんな時だった。
病院からディアナがいなくなったのだ。
幸喜は捜索願を出したが、手がかりすら見つからない。
防犯カメラにもディアナが歩いている姿は映っていなかった。
ただ窓が開いていた事から、窓から連れ去られた可能性があるとみられているが、ディアナの病室は5階。
この高さからどうやって連れだせると言うのだろう? と疑問だった。
ディアナが連れ去られた件で、零はどこか違和感を感じていた。
何故なら。
ディアナと美奈が、密かに金銭のやり取りをしていた証拠が上がってきたところだったのだ。
手渡しと、仲介人を通して行われていた事だが、仲介人は現在行くへ不明。
捜索中だが、手がかりが今のところなかった。
ディアナの容疑が固まりつつあるときに、ディアナが行くへ不明…。
あまりにも出来すぎていると零は思っていた。