嘘と愛
「まっいいや。どちらにしても、お母さんにちゃんと会えたし、改めて紹介することもなさそうで良かったわ」

 3人顔を見合わせて、笑いあった。




 それから1週間後。
 真夏の太陽がギラギラとして、梅雨も明けそうな今日この頃。
 零の元に一本の電話が入ってきた。

 それは…
 椿が亡くなった報せだった。

 夏風邪から肺炎を引き起こし、そのまま亡くなってしまった椿。
 零に電話をかけた日は、まだ肺炎が治りきっていなかったが話せるくらい体調が良かった事から電話をかけて来たようだ。

 しかし椿は自分の死を分かっていたのか、周りの人達には「いつも本当に有難う」と感謝の言葉しか言わなかったようだ。

 
 最後は眠るように亡くなっていた椿。
 朝ご飯を運んできた看護師が発見した時は、死後数時間経過していたようだ。

 椿の訃報を聞いて、零は相当ショックを受けていた。

 真相に近づいて、明るい兆しが見えてきていたと思っていたのに…
 これからもっと椿と話したいことも沢山あったのに…

 いろんな思いが込みあがってきて…
 零は悔しい思いでいっぱいだった。


 椿の葬儀は身内だけで行うと言われ、埋葬は一柳家のお墓にされることになった。
 椿が生前に、葬儀はひっそりとしてほしいと言い残していたのだ。

 葬儀が終わり埋葬されてから、お参りに来て欲しいと言われ、零も幸喜も少し待つ事にした。


 椿が亡くなっても、零はいつものように仕事をこなしている。
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