嘘と愛

 駅前からちょっと離れた場所にあるおしゃれなイタリアンのお店。
 ラフな感じでゆったりしていて、気楽に楽しめる場所。

 座り心地のよいソファに腰かけて、大雅はおすすめメニューを注文した。
 零も好き嫌いはないと言った為、大雅と同じものを注文した。


 ちょっと困ったような目をして視線を落としている零。

「ごめんね、ちょっと強引に誘ってしまったね」
「…はい…」

「でもさ、零ちゃんはきっと強引な方が動いてくれると思うからさっ」
「…外食は…あまり慣れていませんので…」

「そうだったんだ。でもここは、気楽に楽しめるお店だから気にしなくていいよ。ほら、お箸もあるだろう? 箸で食べれるパスタだからさっ」
「はい…」

 待っている間、大雅は楽しそうに話してくれる。

 全くメールにも電話にも反応しない零を、問いただすこともなく、楽しい話題を話し続けてくれる大雅に、零はちょっと罪悪感を感じていた。

 初めは視線を落としていた零だが、次第に、大雅の話しが面白くなって。
 ゆっくりと視線を上げた。

 目と目が合うと、大雅はとても嬉しそうに笑ってくれた。


「やっと目を合わせてくれたね、零ちゃん」
「あ…」

 ちょっと恥ずかしそうに、零はまた視線を反らした。

「零ちゃんって、綺麗な目をしているよね」
「いえ…そんな事…」

「初めて会った時からずっと、思っていたよ。とっても綺麗な目だって。きっと、心が清らかなんだね」
「そんな…」

「俺は目の綺麗な人に、悪い人はいないとずっと信じているよ」

 そんな事初めて言われた…。
 ずっと…変な目だって言われていたのに…。
 この人、なんでそんな事言えるの? 
 こんな私といても…明るく話してくれるし…。

 ギュッと、零は左手を右手で握り締めた。
 こんな私に…優しくしてくれるの?




 注文した料理が届いて。
 食べ始める前に、大雅は割り箸を割って零に渡してくれた。

 ちょっと驚いている零に、そっと微笑んで。

「あれ? フォークのほうが良かった? 」
「い、いえ…お箸でいいです…」

 零は素直に受け取った。

 ちょっとぎこちなく食べている零。
 大雅はそんな零を見守りながら食べている。

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