嘘と愛
☆彡
7年後。
金奈市は相変わらず穏やかで平和な街並みだ。
季節は秋。
宗田ホールディングはますます忙しくなっていた。
社長室。
忙しそうにパソコンに向かい仕事をしている大雅がいる。
あれから大雅は3年後に社長に就任した。
幸喜は会長となり、主に相談役になり殆ど大雅に任せている。
現在副社長の席は空白のままである。
コンコン。
「失礼します」
ドアを開けて入ってきたのは…
シックな茶色いワンピースを着た零こと桜。
あれから零は名前を桜と改名して、イリュージュと同じ弁護士を目指して法科大学へ進学しストレートで司法試験に合格し弁護士になった。
今は宗田ホールディングの顧問弁護士を、イリュージュと一緒にやっている。
大雅は仕事の手を止めて席を立った。
「ほーら、お母さん帰ってきたぞ」
デスクの傍らにあるベビーバウンザーに、小さな赤ちゃんが眠っていた。
大雅が抱き上げるとご機嫌で目を覚ました赤ちゃん。
この赤ちゃんは、大雅と桜の子供。
男の子で将太(しょうた)と言う。
産まれて6ヶ月過ぎたばかりで、桜が仕事に復帰したことで大雅が仕事の合間に見ている事が多くなった。
幸い、桜の事務所を同じビル内の一室にしているため、子供を見ながら仕事ができる環境で、左手がない桜でも周りが協力してくれて何も不自由はなかった。
結婚して6年目でやっと子供が産まれて、幸喜もイリュージュも大喜びである。
大雅が将太を抱っこして、桜に渡した。