嘘と愛

「将太、ただいま」

 とても穏やかな表情になった桜。
 ショートだった髪は肩まで長くなり、軽くウェーブをかけている。
 明るいピンク系のワンピースに黒いジャケットを羽織って、広いヒールを履いている桜はイリュージュととても似ている。
 
 桜に抱っこされると将太はとてもご機嫌に笑っている。
 将太は桜と似ていて、瞳が緑色である。
 でも大雅にも似ている部分もあり、将来はイケメン間違いなしと言われいる。



 コンコン。

「大雅、入ってもいいか? 」

 幸喜がやって来た。



 ドアを開けると。

「伯父ちゃん! 」

 勢いよく元気にかけて来た男の子。
 男の子にしてはとても綺麗な顔立ちに、優しい目をしている。
 色白でちょっと外国人みたいな雰囲気もあり、とても不思議な感じがする。

 ランドセルを背負って制服を着ている姿から、小学生で学校帰りのようだ。


「昭夫(あきお)今帰ったのか? 」

 ひょいと、大雅は昭夫と呼ばれる男の子を抱き上げた。

「うん、早く将太君に会いたかったから来ちゃった」

 ニコッと笑う昭夫の笑顔は幸喜にそっくり。


 昭夫は幸喜とイリュージュの間に産まれた子供である。
 もう子供はできないと諦めていたが、あれから半年後に子供が授かり産まれてきた昭夫。

 かなり高齢出産で心配されたが、周りの心配をよそに小さく元気な子供が産まれた。
 今では周りよりちょっと大きい昭夫。

 将太の面倒をよく見てくれ、頼りになるお兄ちゃんである。

 
「あら、昭夫ったらまた大雅君の所に来ちゃったの? 」

 イリュージュがやって来た。
 長い髪をバッサリ切って、ショートヘヤーになったイリュージュは桜と似た感じになり随分と穏やかな表情になった。
 7年経過しても若々しいままである。

「さぁ、お父さんのお仕事の邪魔しちゃいけないから、そろそろ行きましょうか」

 将太を抱っこした桜が言った。

「伯父ちゃん、今日は夜ご飯は伯父ちゃんの大好きなハンバーグだからね。早く帰ってきてね」
「おお、分かったよ」


 大雅に見送られながら帰ってゆく桜達。
 忙しい中でもゆるりとした時間を保ち、子供達を社内に連れてきて仕事の様子を見せている大雅。


 昭夫は大きくなったら、宗田ホールディングに入社するんだと言って張り切っている。
 将太の未来は将太に決めさせればいいと、大雅も桜も言っている。

 7年経過して、今は大雅と桜は子供が産まれたことから宗田家で一緒に暮らしていて、毎日大賑わいである。


 それぞれの道に向かって、みんな幸せいっぱいで歩いている。


 あれからもう嘘はない。
 嘘がなくなり、代わりに沢山の愛に囲まれている。

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