嘘と愛
「…左手、義手なんだよね? 」
な、なんで?
どうして分かったの?
大雅の腕の中で零は驚いた顔をした。
「こうして零ちゃんを抱きしめていると見えて来るんだ。…赤ちゃんの時だね…とっても大きな何かが、零ちゃんの左手に落ちてきて。…それが原因…」
嘘でしょう?
なんで? そんなこと分かるの?
ギュッと唇を噛んだ零が、ちょっと震えだした。
そんな零を大雅はギュッと、抱きしめた。
「大丈夫だよ。俺は、全て受け止める。…もし、零ちゃんが俺が宗田ホールディングにいることが嫌なら。いつでも、辞めるよ。そのくらいの覚悟があるから」
「なんで、そんなこと言うの? 」
「だって零ちゃん、俺が初めに名前を名乗った時。苗字を聞いてすごい顔していたから。宗田って苗字に、何かあると感じた。だから、俺が宗田ホールディングにいる事も。俺の名字が宗田であることも。零ちゃんが嫌がるなら、いつでも捨てる覚悟あるから」
「どうしてこそまで…? 」
「だって、愛しているもん。誰よりもずっと…」
愛している…。
その言葉を聞くと、零は何も言えなくなった。
こんなに誰かから想われたことはないから、どうしたらいいのか分からない…。
嬉しい気持ちと戸惑いの気持ちが渦巻いてきて、黙っている零。
黙っている零を、大雅はそっと抱きしめていた…。
その後。
零からの返事はハッキリ聞けなかったが、大雅は家まで送る事にした。
零の家は駅から歩いて10分ほどの場所にあるマンションに住んでいる。
5階建てのマンションで、零は最上階に住んでいる。
3LDKの広いマンション。
マンションの下まででいいと、零は言ったが、大雅が玄関先まで送ると言って。
結局家の前まで送ってもらった零。
最上階の5階は一番広い部屋のようで、1件しかない。
鍵はカードキーになっている。