嘘と愛

 エレベーターで5階まで上がってきて、玄関の前で零は大雅に振り向いた。

「…あの…」

 何かを言いかけて、俯いてしまった零。

「どうしたの? 」
「い、いえ…」

 何か言いたそうに、どこかもじもじしている零。

「どうしたの? 何か言いたい事があるの? 」
「そうではなく…。その…せっかくここまで来てくれたので…上がってもらおうと、思ったので…」

「え? いいの? 入っても」
「はい…1人暮らしなので、散らかっていますが…」

「嬉しいなぁ。もうちょっと、零ちゃんと一緒に、いたかったから」

 零はカードキーで鍵を開けた。



「どうぞ、入って下さい」

 玄関を入ると長い通路があり、洗面所、お風呂場、トイレ、洋室が2つある。

 奥に進むと、リビングとキッチン、そして和室がありテーブルと座布団が置いてあり、テレビが置いてある。

 リビングにはソファーと小さめのテーブル、そして食卓とイス。
 キッチンには小さめの冷蔵庫と食器棚。
 あまり使っていないのか、コンロは綺麗である。


「散らかっていますけど、ソファーに座って下さい」

 そう言って、零はお湯を沸かす為キッチンへ向かった。
 片手でお湯を沸かすために、やかんに水を入れている零を見て大雅は歩み寄って行った。

「いいよ、そんなことしなくて」

 大雅はそっとやかんを持った。


「俺がやるから、かして」
「でもお客様なのに…」
「俺はお客じゃないから、気を使わなくていい。お水でいいよ」


 やかんをシンクに置いて、大雅は食器棚を見た。

 マグカップが数個ある。
 その中の1つをとって大雅は水を飲んだ。

「すみません…」
「謝ることないよ、できることをやればいい。それだけじゃないか」



 ソファーに座って、大雅はお水を一口飲んだ。

「ここって浄水機ついているの? 美味しいねお水」
「はい…父が、つけてくれていたので」
「そっか。前は、お父さんも一緒だったの? 」
「はい…。去年亡くなったんです…」
「え? じゃあ、最近の事なの? 」
「まぁ…」
「病気? 」

 尋ねられると、ギュッと唇を噛んで零は押し黙った。


「…ごめん、辛い事聞いて…」
「いえ…。あの…」

 零はちょっと潤んだ目をしてじっと大雅を見た。

「どうしたの? 」
「…父は…殺されました。…銃で撃たれて」
「えっ…」

 ズキンと大雅の胸に鋭い痛みが走った。
 その痛みに驚いた大雅…。
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