嘘と愛
「…犯人はまだ見つかっていません。…父は、ずっと長年追っていた事件があったのです。その事件で、有力な手掛かりを見つけたのですが。そのとたんに…射殺されました…」
「事件を追っていた? お父さん、警察官だったのか? 」
「はい…警察署長でした。…」
「え? すごい人だね」
ギュッと左手を握りしめ、零は辛そうに目を伏せた。
そんな零を見ると、4ズキンと大雅の胸に鋭い痛みが走った。
その痛みに驚いた大雅…。
「…犯人はまだ見つかっていません。…父は、ずっと長年追っていた事件があったのです。その事件で、有力な手掛かりを見つけたのですが。そのとたんに…射殺されました…」
「事件を追っていた? お父さん、警察官だったのか? 」
「はい…警察署長でした。…」
「え? すごい人だね」
「…私は…孤児なんです。…」
「孤児? 」
「はい…。赤ちゃんの時に、捨てられていました。その時、大怪我をして左手をなくしたようです。発見してくれたのは、育ての父でした。…病院に運ばれて、施設に送られた私を引き取ってくれたのです。父は結婚しても子供に恵まれず、助けた私に運命を感じたと言っていました。母もとても優しく、病弱でしたが。一度も怒られたことはありませんでした。10年前に母は、病気で亡くなりました。…そこからずっと父と2人で頑張ってきたのです…」
グッと何かを押し隠すように、零は俯いてしまった。
「零ちゃん…」
俯く零を大雅がギュッと抱きしめた。
「…よく頑張ったね。…悲しい思いしてきたのに、ずっと我慢して。…すごいね」
「そんな事…」
「零ちゃんは、とっても素敵な人だって俺は感じた。だから…離したくない…」
ギュッと抱きしめている大雅の腕に力が入った。
「愛しているから…俺が護るから。もう一人で頑張らなくていいよ」
そっと身体を離して、大雅は零を見つめた。
イカツイ表情をしている大雅だが、見つめる視線はとても優しくて情熱的。
見つめられると目が離せなくなり、見ていると安心する…。
この人を信じてもいいよね?
零は自分に聞いてみた。
「ねぇ、ちゃんと俺の気持ち受け入れてくれる? 」
そう言われると、胸の奥の方から熱いものを感じた零…。
だが、すぐに返事ができなかった。
できないというよりも、素直に認めてしまうのが怖かった…。