嘘と愛
生き残った椿が産まれて3週間を過ぎる頃。
真夏の太陽がギラギラと輝き、暑い日々が続く時だった。
幸喜の下に、誘拐犯が逮捕されたと警察から連絡が入ってきた。
だが犯人の名前を聞かされ、幸喜は信じられず茫然となった…。
誘拐犯として逮捕されたのは藤崎イリュージュと言う女性。
その女性はディアナの妹であり、一時ではあるが幸喜とも深い関係にあった女性だった。
姉妹であってもディアナとは全く似ていない、気品の備わった上品な顔立ちで、綺麗な金色の髪に切れ長の目がとても魅力的なまるで天使のような優しい顔立ちをしているイリュージュ。
そんなイリュージュが、産まれて間もない赤ちゃんを誘拐して殺してしまうようには到底見えなかった。
逮捕した警察官も信じられない顔をしていたようだ。
犯人が逮捕された事で、ディアナは泣き崩れていたようだが、今まで見向きもしないで冷めていたディアナが突然泣き崩れた姿に幸喜はちょっと呆れていたようだった。
イリュージュは特に言い訳をする事もなく「私が全てやりました」とだけ言って、全て認めていた。
動機については曖昧で「姉が羨ましかった」とだけ言っていた。
全面的に容疑を認めたイリュージュは乳児誘拐と乳児殺害の犯人として無期懲役を下された。
姉妹間で起こった嫉妬からの誘拐事件と殺害事件として片づけられたが、どこかしっくりこない悲しい結末を迎えた乳児誘拐事件と乳児殺害事件。
世間はこの事件に対して
「怖いわね、姉妹間の嫉妬なんて」
「虫も殺さない顔をしているのにね」
「でも母親って子供と似ていないよな」
「姉妹って言っても似ていないしなぁ」
「妹がやった事なら、姉として庇ってあげられないのか? 」
「動機がハッキリしないのが納得できないね」
などと、ディアナ側を擁護する言葉と、ちょっとだけイリュージュ側を擁護する言葉と事件に納得できない言葉が飛び交っていた。
しばらくの間、世間を騒がせた事件だったが、月日が経過するにつれて人々の記憶からは消えゆくものである。
1年経過した頃には
「そう言えばあの事件って、あの後詳しい動機ってわかったのかな? 」
「あの赤ちゃん元気かな? 」
と思い出される事があり。