嘘と愛

 そっと、大雅が零の胸の谷間に触れた。

 ちょっとひんやりとした零の体に、触れた大雅の手のぬくもりが伝わってきて…鼓動が高鳴った。

「ねぇ、俺のシャツのボタン外してくれる? 」

 ちょっと驚いた零だが、恥ずかしそうに右手で大雅のシャツのボタンをゆっくりと外した…。
 
「有難う」

 ボタンが外れると、パサッとシャツを脱いだ大雅。

 シャツを脱いだ大雅の体は、とても逞しく引き締まっている。
 肩幅が広くがっしりした大雅の体は、全てを受け止めてくれるようだ。

 その体が視界に入ると、零は恥ずかしくなり赤くなった…。

 赤くなった零を、大雅がギュッと抱きしめてきた。
 
 抱きしめてくれた大雅はとても暖かく、引き締まった体は全てを護ってくれるような包容力を感じる…。
 包み込んでくるれる腕も力強く、しっかりと受け止めてくれて。

 これが男の人の温もりなんだと、零は思った。

 トクン…トクン…と、規則正しい大雅の鼓動が零にも伝わって来る…。

「寝室どこ? 」
 
 耳元でそっと大雅が囁いた。
  
 恥ずかしながらも、零は寝室の方を指さした。



 指をさされた方向を確認した大雅は、そのまま零を抱きかかえ寝室の方へ歩いて行った。



 零の部屋は玄関から一番近い洋室。
 広々とした部屋に、可愛らしいピンクのベッドカバーのシングルベッドが置いてある。

 クローゼットとベッドだけで、広い空間で心地よい。
 女性の部屋らしく優しい香りがする。

 
 そっとベッドに零を寝かせた大雅は、愛しさが溢れる眼差しでじっと見つめた…。

「零…愛しているよ…」

 いかつい顔をしている大雅の目が、とても情熱的に熱くて。
 その目からは嘘は何も感じられなかった。
 ただ一途に愛していると心から言っている大雅を感じると、零の目が潤んできた。

「…こんな私でも愛してくれるのですか? 」

 メガネの奥で、泣きそうな目をしている零…。
 大雅の気持ちが嬉しい…だけど、こんな自分を愛していると言ってくれるなんて…。

 想いが溢れそうになり、今にも泣きだしそうな零の目が潤んでいた。
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