嘘と愛

「大雅さん…好きです…」

 何も考えずに零が素直に言った。

「俺も、零が一番好きだよ…」

 額と額をくっつけて、大雅はそっと微笑んだ。

 大雅の微笑みを見ると、零は素直に微笑んだ。
 そして何故か涙が頬を伝った…。

 悲しくないのに涙が出てきて。
 零にも何で泣いているのか分からないくらいで。

 零の涙を見ると、大雅もつられて涙が触れてきた。

「零…。魂が解放されているね」
「魂? 」

「ああ、今までずっと我慢してきた事が解放されて自由になれて喜んでいるよ」
 
 そう言われると、零は随分と心が軽くなっているのを感じた。
 
 大雅と繋がって。
 心も体も満たされると、なんとなく重かった荷物が軽くなったようで。
 生きていて良かったと心から想えた。




 しばらく2人で抱き合ったままじっとしていた。

 規則正しい大雅の鼓動を感じて、零はとても安心していた。


「零…。このまま、一緒にいようよ」
「え? 」

「同棲しないか? 」
「でも…」


「ここで、一緒に暮らそう。俺、家を出るから」
「いいの? そんなことして」

「ああ、あの家は俺にとって窮屈だし。父さんだって、妹と一緒のほうが気楽だと思う」
「…そう…。私は構わないけど、仕事が不規則だから。家にいない事も、多いのだけど…」

「別にいいじゃん、帰る場所が同じならそれで」


 よしよしと、大雅は零の頭を撫でた。
 そして、そっと零の左手を取った大雅。


「俺、零の左手になるから」
「そんな…。この手は、物心ついた時からなかったので。不自由には感じていません。だから、気にしないで下さい」

「そうじゃないよ。俺は、零を護る為に産まれてきたから。左手だけじゃない、いつだって、零の盾になって護るから」
「…じゃあ…私にも、貴方の事を護らせてもらえますか? 」

 綺麗な素直な瞳で見つめられ、大雅はドキッと胸が高鳴った。

「俺の事守ってくれるの? 嬉しなぁ」
 
 ギュッと零を抱きしめると、大雅はとても暖かい気持ちが込みあがってきた。

「2人で頑張ろう…一緒に」

 大雅の腕の中で、零はそっと頷いた。

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