嘘と愛

 5年経過する頃には。

「ああ、そんな事件もあったね」
「事件の起こった病院は、暫く患者が減ったようだったね」
「今では患者が戻ってきたけど」

 と遠い記憶のように思い出され。



 10年経過する頃には。

「あ~そんなことあったの? 」
「随分矛盾している事件だったって、聞いているよ」
「赤ちゃんも大きくなってるしね」


 と、なんとも思われないほどになっていった。


 時間が解決するとは、こうゆ事を言うのかもしれない。
 

 
 しかし。

 事件の渦中だった人にとっては、たとえ10年経過しても、その事は昨日の事のように思い出されるだろう…。
 
 ましてや事件が曖昧で、納得できなかった結末だとすれば尚更、その思いは強く残っているに違いない… …。
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