嘘と愛
大雅と栞の様子を見ていた幸喜は、何だか胸騒ぎを感じた。
栞は可愛いキャラで男受けがいいが、今まで本気で交際した男性はいないと聞いている。
ちょっと前には社内で不倫疑惑も噂されていた。
複数の部署で栞に狙われた男性の報告を聞いてるのも事実である。
急に大雅に近づいてきた栞が、何か仕掛けてくるのではなかろうかと幸喜は感じ取っていた。
半ば強引に栞に引っ張られ、カフェテリアにやって来た大雅。
カフェテリアには、残るの休憩時間を珈琲を飲みながら過ごしている社員もまだ多くいる。
四人掛けのテーブルに座った大雅と栞。
栞は大雅の隣に座って体を密着させてきた。
なんなんだ?
あまりにも密着してくる栞に、大雅はぞっとするほど嫌悪感を感じた。
「副社長。営業部の本田さんが、最近しつこく誘ってくるんですよ。私、困ってしまって…。本田さんって結婚しているし。それなのに、奥さんと別れるからって私に交際を申し込んでくるなんてどうゆうつもりなのか分からなくて…」
ん?
大雅は詩織の言葉に違和感を感じた。
「ねぇ副社長。本田さんに、ちょっと注意してもらえません? 」
ギュッと大雅の手を握って、ちょっと色っぽい目で見つめてきた栞。
気持ち悪すぎ…。
なんだか近くで見ると、メイク濃くないか?
ちょっと横目で見た大雅。
確かに栞のメイクは年齢にしては、ちょっと濃いメイクをしている。
特に目元のアイラインが濃く、アイシャドウも濃くて目の下にパンダのように滲んでいるくらいである。
まるでホステスがするようなメイクをして、近くによるとキツイ香水の匂いがしてきて気分が悪くなるくらいである。
こんな女のどこが良くて、男性社員は夢中になるのか…。
大雅には理解できなかった。
「ねぇ副社長、お願いしますよ。私、困っているんです」
今度は大雅の袖を引っ張って、まるで子供がわがままを言うような格好で言ってくる栞。
「俺の言う事ではないと思うけど。営業部長に、それとなく話しておくよ」
「本当ですか? すごく助かります」
ニコッっと笑った栞。
その笑顔はとても気持ち悪い笑みだった。
ものすごい黒いのを感じる…。
誰かに誘導されているのか?
大雅は栞の向こうに、もっと黒く重いものを感じた。