嘘と愛
忍び寄る影
午後からはいつも通り仕事が始まり、何事もなく過ぎ去って行った。
大雅は19時に仕事終え帰社した。
仕事が終わった大雅は零にメールを送って、今日は何時に帰れるのか聞いたが返事がなかった。
まだ仕事中で返信はできないのだと思った大雅は、今日の零は帰りが遅いと判断した。
帰ってきたら軽く何か食べれるように作っておくのもいいだろう。
そう思った大雅は駅近くのスーパーで買い物をして帰ろうと歩いていた。
すると…。
「副社長! 」
叫ぶような声が聞こえて、大雅は足を止めた。
「副社長! 助けて下さい! 」
声が近づいてきて、何事かと大雅が振り向くと、走って来る栞の姿が目に入った。
走ってきた栞は、そのまま大雅にギュッとしがみ付いてきた。
ギュッとしがみ付いてきた栞から、何となく嫌な感じを受けた大雅…。
「なに? どうしたんだ? 」
大雅が尋ねると、栞は泣きそうな顔をして見詰めてきた。
「ほ、本田さんが…」
泣きそうな声で栞は後ろを指さした。
本田さんってうちの会社の社員か?
そう思って大雅が振り向くと、営業部の男性社員の本田恭平(ほんだ・きょうへい)栞を追いかけてきた。
背が高くちょっとごつい感じの中年の恭平は、真面目な社員で仕事もできる人間。
真面目そうな眼鏡をかけている恭平が、血相を変えて追いかけて来たのを見て、大雅は何事かと驚いた。
恭平が近づいてくると、栞は大雅の背に隠れるようにしがみ付いてきた。
近づいてきた恭平は、大雅の背に隠れる栞を見てハッとなり立ち止まった。
「副社長…」
大雅を見て恭平は驚いた顔をしている。
大雅は栞を突き放したかったが、ギュッとしがみ付かれて話すことが出来なかった。
「どうかしたのか? 何かあったのか? 」
大雅が尋ねると、恭平はちょっと言いずらそうな顔をした。
「副社長、本田さんが無理矢理誘ってきて。今、ホテルに連れ込まれそうだったんです」
え? と、驚いて大雅は恭平を見た。
「何を言っているんだ! 相談があると言って、呼び出してきたのはそっちじゃないか」
「違います! 帰ろうとしたら、跡を着けて来て。逃げようとしたら、追いかけて来たんです。そして、無理矢理掴まれて…怖くて…」
どこかわざとらしく、栞は泣き出した。
「何を言い出すのか。とにかく、俺の財布を返してくれないか? 突然抱き着いて、財布を抜き取って逃げ出したのはそっちだろう? 」
取り乱している栞に対して、恭平は冷静に対応している。
間に挟まれた大雅は、様子を見ていていも栞が嘘を言っているのは良く判った。
だが確証するものがないと、嘘をついているとは言えない…。
どうすれば… …。
そう思っていると、栞の鞄から財布らしきものが見えているのに気付いた大雅。
その財布は男性用の財布に見え、栞が持つような好みではない財布であった。
「早く財布を返してくれ! このままじゃ、家にも帰れないじゃないか」
「何を言っているの? 私、財布なんて知りません! 」
大雅の背に隠れ、栞はニヤッと口元で笑った。
「ねぇ、君の財布を見せてもらえるか? 」
大雅は栞にそう言った。
大雅は19時に仕事終え帰社した。
仕事が終わった大雅は零にメールを送って、今日は何時に帰れるのか聞いたが返事がなかった。
まだ仕事中で返信はできないのだと思った大雅は、今日の零は帰りが遅いと判断した。
帰ってきたら軽く何か食べれるように作っておくのもいいだろう。
そう思った大雅は駅近くのスーパーで買い物をして帰ろうと歩いていた。
すると…。
「副社長! 」
叫ぶような声が聞こえて、大雅は足を止めた。
「副社長! 助けて下さい! 」
声が近づいてきて、何事かと大雅が振り向くと、走って来る栞の姿が目に入った。
走ってきた栞は、そのまま大雅にギュッとしがみ付いてきた。
ギュッとしがみ付いてきた栞から、何となく嫌な感じを受けた大雅…。
「なに? どうしたんだ? 」
大雅が尋ねると、栞は泣きそうな顔をして見詰めてきた。
「ほ、本田さんが…」
泣きそうな声で栞は後ろを指さした。
本田さんってうちの会社の社員か?
そう思って大雅が振り向くと、営業部の男性社員の本田恭平(ほんだ・きょうへい)栞を追いかけてきた。
背が高くちょっとごつい感じの中年の恭平は、真面目な社員で仕事もできる人間。
真面目そうな眼鏡をかけている恭平が、血相を変えて追いかけて来たのを見て、大雅は何事かと驚いた。
恭平が近づいてくると、栞は大雅の背に隠れるようにしがみ付いてきた。
近づいてきた恭平は、大雅の背に隠れる栞を見てハッとなり立ち止まった。
「副社長…」
大雅を見て恭平は驚いた顔をしている。
大雅は栞を突き放したかったが、ギュッとしがみ付かれて話すことが出来なかった。
「どうかしたのか? 何かあったのか? 」
大雅が尋ねると、恭平はちょっと言いずらそうな顔をした。
「副社長、本田さんが無理矢理誘ってきて。今、ホテルに連れ込まれそうだったんです」
え? と、驚いて大雅は恭平を見た。
「何を言っているんだ! 相談があると言って、呼び出してきたのはそっちじゃないか」
「違います! 帰ろうとしたら、跡を着けて来て。逃げようとしたら、追いかけて来たんです。そして、無理矢理掴まれて…怖くて…」
どこかわざとらしく、栞は泣き出した。
「何を言い出すのか。とにかく、俺の財布を返してくれないか? 突然抱き着いて、財布を抜き取って逃げ出したのはそっちだろう? 」
取り乱している栞に対して、恭平は冷静に対応している。
間に挟まれた大雅は、様子を見ていていも栞が嘘を言っているのは良く判った。
だが確証するものがないと、嘘をついているとは言えない…。
どうすれば… …。
そう思っていると、栞の鞄から財布らしきものが見えているのに気付いた大雅。
その財布は男性用の財布に見え、栞が持つような好みではない財布であった。
「早く財布を返してくれ! このままじゃ、家にも帰れないじゃないか」
「何を言っているの? 私、財布なんて知りません! 」
大雅の背に隠れ、栞はニヤッと口元で笑った。
「ねぇ、君の財布を見せてもらえるか? 」
大雅は栞にそう言った。